ここではクルマのオーディオシステムにスポットを当て、まずは音質が低下してしまう原因について分析していきます。
音質低下の原因ではなく、それらの対策方法となるオーディオシステムの音質改善についての具体的方法は、こちらの”こんな方法があったのか!車の音質を劇的にUPさせる2つの対策[システム編]“の記事をご覧ください。
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部品がよくない
音がよくない原因の1つ目は、「部品の性能がよくない」です。さらにその部品についてですが、クルマの中で音楽を聴く際に音質を決定づける部品は、主に
- メディア再生機器(CD/DVDプレーヤー+ラジオチューナー内蔵一体型オーディオ・ナビなど)
- オーディオアンプ(メディア再生機器内蔵タイプまたは少し大型の外付けタイプ)
- 接続ケーブル
- スピーカー
の4つです。各部品が部品の内部からではなく、例えばノイズなどの外部から受ける影響については、次の章の”部品の取付状態”に大きく影響されるため、ここでは省略しました。
高価な部品であれば必ずしも音に関する性能がよいと言い切れるわけではありませんが、部品単品に関しては、一般的には高価な部品ほど音にとってよりよい材料・構造設計となっており、音質低下が抑えられている傾向にあります。
それぞれの部品において音質が低下してしまう詳細な理由は次の通りです。
メディア再生機器での音質低下理由
CD/DVDから信号を読み取る際の読取エラーやエラー訂正によるノイズ混入。
再生機器内の電子回路上の周辺部からのノイズ信号混入。
オーディオアンプでの音質低下理由
音楽信号増幅時の信号歪みや電子回路上の周辺部からのノイズ信号混入。
接続ケーブルでの音質低下理由
ケーブルの材料・設計特性による音楽信号の減衰・低下・歪。
スピーカーでの音質低下理由
スピーカーの材料・設計特性による音楽信号の低下・歪。
部品の取付状態がよくない
2つ目の原因は、前章と同じく4つの部品について、「取付状態がよくない」からとなります。取付状態に関しては、部品単品とは真逆で、部品の価格・性能とはほとんど関係なく、いかに音質低下が抑えられる取付が実施されているかが重要となります。主に、
- メディア再生機器取付状態
- オーディオアンプ取付状態
- 接続ケーブル取付状態
- スピーカー取付状態
の4つの部品が影響しますが、特にスピーカーは取付方法により大きく音が変わってしまうので、正しく取付られているかが非常に重要です。部品ごとの詳細な音質低下の理由は以下の通りです。
メディア再生機器取付状態による音質低下理由
CDデッキなどのメディア再生機器を例えばオルタネーターの制御やパワーステアリングの制御などを行う大きな電流を必要とする制御機器+その配線の近くに配置すると強いノイズを受け、オーディオの信号にノイズが混じってしまう場合があります。
1つ目として、このように電気的なノイズを発生する部品+その配線の近くに配置されていることによる機器内部回路内へのノイズ混入が音質低下理由として考えられます。
このような電気的なノイズの問題に関しては、クルマの限られた車室内スペースの中でノイズ発生源から距離を離す以外の根本対策が無く、非常に対策が難しいです。
よって、自動車メーカーでの開発時点で対策が非常に重要であり、機器を後付けする際の最も大きな課題の1つと言えます。
また2つ目として、CDデッキなどのメディア再生機器本体の取付時に固定方法が弱いと、機器本体そのものが振動して取付周辺部分にコツコツ当たって異音が発生したり、またCD/DVDなど再生時に機械的に動くメディアの場合、音飛び発生につながったりします。
こちらに関しては、しっかりとした固定を行うということを徹底すれば、機器を後付けする際でも問題となりません。
オーディオアンプ取付状態による音質低下理由
メディア再生機器と同じく、アンプで増幅する前のオーディオ信号の処理や、場合によってはデジタルではなくアナログ信号の処理を行うオーディオアンプにとって、強いノイズ発生させる部品+その配線・の近くに配置されていることによる機器内部回路内へのノイズ混入が音質低下理由として考えられます。
また、機器本体固定方法が弱いことによる振動異音も同様に考えられます。
接続ケーブル取付状態による音質低下理由
強いノイズ発生する部品+その配線の近くに配置されることによる影響については既に書きましたが、メディア再生機器やオーディオアンプなどの部品同様、オーディオ信号やオーディオ機器行きの電流が流れる全ての配線ケーブルにとってもノイズは大敵です。
シールド線を使ったりノイズ源と距離を離したりすることである程度の対策は可能性ですが、特にアナログ信号をアンバランス(不平衡)伝送しているオーディオ信号線は、ノイズに対して最も弱いものの1つであるため、慎重なケーブル経路配置が重要です。
こちらに関しても、自動車メーカーでの開発時点で対策が非常に重要であり、機器を後付けする際の最も大きな課題の1つと言えます。
スピーカー取付状態による音質低下理由
最後にスピーカーの取付状態による音質低下理由についてですが、以下の5つが考えられます。
これまで書いたノイズや周辺部品との接触・共振による異音発生の問題が2点、スピーカーならではのオーディオ信号が空気中を伝わる音の波に変換された後の影響が3点考えられます。
- 強いノイズを発生させる部品・ケーブルの近くに配置されていることによる磁気回路内へのノイズ混入
- スピーカー本体固定方法が弱いことによる振動異音・音のビビりつき(周辺部品との共振)発生
- スピーカー本体取付角度・向きとクルマの乗員の耳位置のズレによる音質低下
- スピーカー本体前面部とスピーカーカバーまでの距離が長すぎることによる音質低下(前室効果)
- スピーカー本体前面部のスピーカーカバーの孔の面積不足による音質低下(開口率不足)
音質チューニング(音のバランス調整)がよくない
最後に3つ目の音がよくない原因は、「音のバランス調整がよくない」です。
特にこの「音のバランス調整」こそが、1つ前の「取付状態」と合わせて、家庭用のオーディオ機器と大きく違うところになります。
例えば、家のリビングに置く用にスピーカー・アンプ・CDプレーヤーのコンポセットを買ってきたとします。ソファーに座って聴くとして、そのソファーに向け て2つのスピーカーを左右対象に設置します。その場合、その音質の90%は、そのコンポの部品の性能によって決定されます。
しかしクルマの場合、部品の性能によって音質が決定づけられるのは、音質全体の約20%でしかないのです。
それは、クルマの中の場合、家のリビングと違ってスピーカーの向き・配置と空間の狭さに限界があるからです。
例えば、多くのクルマで2WAY以上のシステムの場合のウーハースピーカーや1WAYの場合のフルレンジスピーカーは、フロントドアに取り付けられていますが、その向きは左右でお互い向き合っている方向です。
リビングの場合と比べ約90度違います。しかも向き合うということは、せっかくのステレオの音を打ち消しあう方向でもあるのです。
さらにフロントドア足元付近のスピーカー取付部から乗員の耳に届くまでに、フロントシートなど多くの障害物があり、リビングではほぼ発生しえない音の吸収や反射が起こります。
この音の吸収や反射をなるべく減らすために行うのが、「取付の工夫」です。
しかし、それでも残ってしまった音の吸収や反射を補正するのが、「音のバランス調整」なのです。
主に、
- タイムアライメント調整:各スピーカーから音が出るタイミングをあえてズラし、乗員の耳元に届くタイミングを揃える工夫で音の輪郭をはっきりさせる。
- 周波数特性カーブ調整:各周波数の音の強さの調整で吸収されて失われた音や、反射してずれた音を補正する。
の2つを行います。
クルマの場合、最終的な音質を決定づける要素の割合は、
- スピーカー・アンプなど部品の性能:約20%
- 特にスピーカーなど部品の取付状態:約40%
- 音のバランス調整:約40%
となります。
音のバランス調整がいかに大切であるか、どれほど最終的な音質に影響するか、ご理解いただけたでしょうか?
以上3つの音質低下要因についての対策方法は、こちらの”こんな方法があったのか!車の音質を劇的にUPさせる2つの対策[システム編]“の記事をご覧ください。