AUX(エーユーエックス)とは、下図のような外部機器との接続プラグ・端子類の総称です。
AUX端子に挿さるミニプラグには、パッと見ただけでは分かりにくい微妙な違いと想像以上に多くの種類があります。例えば下図のプラグはパッと見は同じプラグに見えますが、よく見るとプラグのサイズ・線の数が微妙に違います。
ここで、特に注意していただきたいことが1つあります。それは、プラグが挿せてしまうからといって、間違った組み合わせで機器とケーブルを接続すると機器が壊れてしまう場合すらあるということです。例えば、以下のようなシーンです。
「スマホと車のAUX端子を接続したいけど、ケーブルなくしたっぽい…」
「似た感じのケーブル見つけたけど、ちゃんと挿せるやん!挿せるってことは使える!?」
「ビデオカメラとパソコンを接続したいけど、専用ケーブルとか使うんかなぁ…」
「あれ!?このスマホ用のケーブルちゃんと挿せるやん!挿せるってことは使える!?」
偶然、使えてしまう場合もあるかもしれませんが、接続して電源を入れた瞬間、音が出ない・ノイズが聞こえるなどの症状が現れるだけでなく、最悪、接続機器が壊れてしまう場合もあるのです。
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ここでは、間違いやすいAUX端子・プラグを正しくお使いいただけるよう、現時点で存在するほぼ全ての種類のAUX端子・プラグを整理し、普段電子部品の開発を行う技術者の視点や実体験を元に情報をまとめてみました。
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AUXとは?
AUX端子の「AUX」とは「補助・予備」
まずはじめにAUX端子のAUXとは、何でしょうか?
「補助の」、「予備の」などの意味を持つ英語の「Auxiliary」の最初の3文字が起源で「AUX」です。 つまり、AUX端子とは、「補助端子」、「予備端子」といった意味になります。
AUXの読み方とはエーユーエックス
次に、AUXの読み方ですが、一般的には「エーユーエックス」、「オックス」、「オークス」と様々ですが、私のまわりのカーオーディオ技術者の間では、「エーユーエックス」と読んでいる人が多いです。
「エーユーエックス」と呼んでおけば一番無難です。 「は?何それ?」と言われる確率は最も低いです(笑)。
AUX端子とは音声信号の予備入力端子
カーナビやカーオーディオのAUX端子の場合、標準で装備されているラジオやテレビといった音楽ソースに対し、ウォークマン・iPod・スマホなどの外部機器が接続できる予備の入力端子ということになります。
ところで、ウォークマン・iPod・スマホなどのイヤホンジャック(出力端子)やパソコンなどのマイク入力ジャック(入力端子)もAUX端子と同じか似たような形をしています。これは広い意味では、予備の端子(≒AUX端子)とも言えますが、 狭い意味では、ジャックの形が同じというだけで、本来の機能に対して予備的に外部機器がつながるわけではないので、AUX端子とは呼ばないという解釈もできます。
ただ、どちらの意味にせよ、AUXとは何かをあとから接続できる予備的な端子と捉えると分かりやすいと思います。
また、AUX端子に接続される信号は、基本的に双方向に流れるの通信信号では無く片方向に流れる一方通行の信号であるため、
- 端子への入力:AUX IN端子
- 端子からの出力:AUX OUT端子
の2パターンが存在します。
AUX端子とイヤホンジャックの違い
広い意味でのAUX端子として最も馴染み深いのは、スマホ・iPad・ウォークマンなどのイヤホンジャックです。例えばスマホと接続するなら、機械の中で再生された音楽信号をイヤホンやスピーカーに向けて出力する側のAUX出力端子と考えられます。
一方で、一般的にAUX端子と言うと音楽信号が入力される側のAUX入力端子を指す場合が多いので、以下の観点でAUX端子とイヤホンジャックは全く違う別のものです。
- AUX端子:主にステレオミニ入力端子を指す
- イヤホンジャック:主にステレオミニ出力端子を指す
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AUXフォーンプラグとAUX端子(ジャック/ポート)
つづいて、AUX端子に挿せる具体的なプラグの種類について整理していきます。
よく見かける下図のミニプラグですが、正式にはフォーンプラグという名前のプラグの中の1つです。
挿す側(オス側)をプラグと呼び、挿される側(メス側)を端子・ジャック・ポートと呼びます。 つまり、
- 挿す側(棒) → AUXプラグ
- 挿される側(穴) → AUX端子, AUXジャック, AUXポート
です。 日本語の「端子」は一般的にプラグとジャックの両方のことを指しますが、日常的には挿される側のジャックのことをAUX端子のように表現することが多いです。
下図のSONYのヘッドホンアンプのように複数のタイプのAUXジャックが装備されている機器もあります。
フォーンプラグ・ジャックには、大きさと構造(何極か)によりかなり多くの種類があります。
最も大事な注意ポイントは繰り返しになりますが、大きささえ合っていれば構造が合っていなくてもプラグがジャック(AUX端子の穴)に挿せてしまうことです。
AUXプラグのサイズと構造(何極か)
AUXプラグのサイズによる分類(2.5mm, 3.5mm, 4.4mm, 6.3mm)
まずサイズについては、以下の4種類です。
- マイクロプラグ(直径:2.5mm)・・・主にICレコーダーなどの小型機器に採用
- ミニプラグ(直径:3.5mm)・・・主に音楽プレイヤーやパソコンなどの民生機器に採用
- JEITAバランスプラグ(直径:4.4mm)・・・JEITA(電子情報技術産業協会)が2016年に規格化したバランス接続用端子
- 標準プラグ(直径:6.3mm)・・・主に楽器や音響機材などに採用
ヘッドホン等では民生用機器とプロ用の業務用機器の明確な境目が存在しないので、ミニプラグのものと標準プラグのものが混在しています。
そこで、下の写真のような標準⇔ミニ変換プラグが用意されています。 標準プラグのヘッドホンをミニジャックのウォークマンに接続する場合などで私も絶賛愛用中です。
ちなみにこのステレオミニの変換プラグ。 最近では上記以外にも非常に多くの便利なタイプのものが存在します。 最新のステレオミニ変換プラグの価格やレビューはこちらからどうぞ。
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AUXプラグの構造(何極か)による分類
次に、構造(何極か)についてですが、見た目的には極の違いであれば先っちょの線の数で区別できます。
- 2極プラグ → 先端の線が1本
- 3極プラグ → 先端の線が2本
- 4極プラグ → 先端の線が3本
- 5極プラグ → 先端の線が4本
線の部分で電気的に絶縁されているので、線の数+1の極数の信号を区別して伝送できるしくみです。
現状流通している主なプラグの構造(何極か)と信号の種類によって分類すると以下の8種類となります。
- (1)2極プラグ(モノラル信号のアンバランス伝送用)
- (2)3極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用 or モノラル信号のバランス伝送用)
- (3)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用)
- (4)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用)
- (5)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+その他制御用)
- (6)4極プラグ(ステレオ信号のバランス伝送用)
- (7)5極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+ノイズキャンセリングマイク用)
- (8)5極プラグ(ステレオ信号のバランス/アンバランス伝送用+アンバランス時のGND用)
この中で一番メジャーでよく使用されているものは、「(2)3極プラグ」のミニプラグです。 よく聞くステレオミニプラグとは、基本的に(2)の3極ミニプラグのことを指します。
通常カーオーディオへの入力は、このような3極のステレオミニプラグケーブルで接続するのが一般的です。
最も極数が多いのが下図のような5極プラグです。 私KYOもお世話になってるSONYのノイズキャンセリング機能付ウォークマンなどに採用されています。 通常の左右ステレオ音声出力+グランド+左右のノイズキャンセル処理用マイク入力の合計5つ・・・プラグ上が線だらけです。
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2~3極AUXミニプラグ:線の数に気をつける
先っちょの線の数が1本~2本の2極~3極プラグの場合は、先っちょの線の数にさえ気をつけていれば、大きな問題は起きません。
- ステレオで聴きたい場合(アンバランス伝送) → 先端から“左音声”→”右音声”→”グランド”の3極プラグを使用
- モノラルで聴きたい場合(バランス伝送) → 先端から“音声+”→”音声-”→”グランド”3極プラグを使用
- モノラルで聴きたい場合(アンバランス伝送) → 先端から“音声”→”グランド”の2極プラグを使用
ここで、バランス・アンバランスの2通りの伝送方式を書きましたが、通常はアンバランスで十分とご理解ください。
バランス伝送はアンバランス伝送よりも”グランドが安定”や”外部からのノイズに強い”などのメリットがありますが、楽器・業務用音響機器や一部の超高級民生機器を除くほとんどの民生機器ではバランス伝送に非対応です。
ちなみにバランス伝送は平衡伝送とも呼ばれ、伝送信号と逆相の信号を同時に伝送することで、ノイズをキャンセルする技術です。 これに対しアンバランス伝送は不平衡伝送とも呼ばれ、シンプルにグランド信号を基準として、伝送信号を送ります。
よって、ステレオやモノラルの音声を聴く場合の先っちょの線の数が1本~2本のケーブル選びであれば、難しく考えず、
- 機器側がステレオ対応 → 先端の線が2本の3極プラグを使用
- 機器側がモノラル対応 → 先端の線が1本の2極プラグを使用
とすれば十分です。
4極AUXステレオミニプラグ:線の数でも区別できない
4極以上のプラグには統一された規格がないため、様々な規格が乱立しています。
また、標準・マイクロプラグについては4極以上のタイプはほぼ存在しないので、ここでは特にミニプラグについて書かせていただきます。
特に下図のような4極ミニプラグについては、「先っちょの線の数でも区別できない」という大変不幸な事態になっています。
2極~3極プラグや5極プラグについては、先っちょの線の数にさえ気をつけていれば、それほど間違いやすい状況は発生しません。 しかし、この4極ミニプラグだけは規格がぐちゃぐちゃの状態です。
まず、この4極ミニプラグケーブル伝送される情報は、代表的なものとして以下3つがあげられます。
- ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用 → スマホ・携帯電話・パソコンなどのイヤホン+マイクなど
- ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用 → ビデオカメラ・スマホなどの音声+映像出力
- ステレオ信号のバランス伝送用 → ハイエンド音楽プレーヤー(ハイレゾウォークマン等)や高級アンプ
マイクの主な用途は、
- スマホ・携帯電話 → ハンズフリー通話・スカイプなどのTV電話/オンライン会議など
- パソコン → オンラインゲーム・スカイプなどのTV電話/オンライン会議・音声チャットなど
です。 最近は働き方改革の一環としてテレワーク導入が進んでいるので、スカイプなどのオンライン会議での利用が一番多いかもしれません。
次に代表例ごとに現状存在する主な規格・採用機器と注意点等を書かせていただきます。
4極AUXミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送+マイク用)の規格
“4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク信号)”では、以下の2つの規格が混在しています。
- CTIA(Cellular Telephone Industry Association)規格:先端から“左音声”→”右音声”→”グランド”→”マイク”
- OMTP(Open Mobile Terminal Platform)規格:先端から“左音声”→”右音声”→”マイク”→”グランド”
iPhoneがCTIA規格を採用していることもあり、最近はCTIA規格の製品が多く流通しています。
しかし、一部OMTP規格の製品も残っており、機器と別売りのケーブル・変換プラグを購入される際は、対応機器名・規格名を事前に確認いただくのがおすすめです。
中には、”OMTP”や”CTIA”のような規格名の記載がない場合もありますので、その場合は「iPhone対応」のような対応機器名を確認してみてください。
私自身、オンライン会議で4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク信号)を頻繁に利用しますが、iPhone6の付属品やGalaxy S8の付属品マイク付きイヤホンで問題なく使用可能です。 実感としてもCTIA規格が主流な印象です。
4極AUXミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送+映像用)の規格
“4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像信号)”では、さらに以下の5つ程度の規格が混在しています。
もしかしたらまだ他にもあるかもしれません(笑)。 もう乱立というか、ぐちゃぐちゃもいいとこです。
- SONY等の製品に採用の規格:先端から“左音声”→”映像”→”グランド”→”右音声”
- Panasonic等の製品に採用の規格:先端から“右音声”→”グランド”→”映像”→”左音声”
- iPod等のアップル社製品・パイオニア等の製品に採用の規格:先端から“左音声”→”右音声”→”グランド”→”映像”
- フランスの家電メーカーArchos等の製品に採用の規格:先端から“右音声”→””左音声”→”グランド”→”映像”
- その他の製品に採用の規格:先端から“映像”→”左音声”→”右音声”→”グランド”
非常にややこしいいので、基本的には機器本体の付属ケーブルのみの使用がおすすめです。
しかしどうしても他機器に接続する上で、ケーブルの長さ不足や相手機器のプラグ形状違いといった理由で、新たにケーブルや変換プラグを購入しなければならない場合は、SONYやPanasonicなどの機器メーカー名や”左音声”→”映像”→”グランド”→”右音声”などの信号配列を念入りに確認いただくのがおすすめです。
4極AUXミニプラグ(ステレオ信号のバランス伝送用)の規格
厳密には規格化されていませんが、高音質化を目的として4極を使ってステレオ信号のバランス伝送(L+, R+, L-, R-など)を行う端子が登場しています。 これらは、ハイレゾウォークマンなどハイエンドの音楽プレーヤーやハイエンドのイヤホン・ヘッドフォンと共に登場しました。 現状、以下の2つ程度の規格が混在しています。
- SONY, OPPO系:先端から順に、L+, R+, L-, R-
- Astell&Kern系:先端から順に、R-,R+,L+,L-
ここでもステレオ信号のバランス伝送という同じ目的にもかかわらず、メーカーによって信号の配列が違うので、ケーブル接続を行う場合は注意が必要です。
基本的には機器本体の付属ケーブルを使用するのが無難ですが、音楽プレーヤーとイヤホン・ヘッドホンのメーカーが違う場合、信号配列を念入りに確認いただいた上で、必要に応じて変換プラグ、専用ケーブルの準備が必要になることがあります。
AUX端子/ミニプラグ規格の種類まとめ
最後にAUX端子接続用ミニプラグの規格の種類についてまとめてみます。
ミニプラグの構造(何極か)と信号の種類によって分類すると以下(1)~(8)の8種類でしたが、例えば「(2)3極プラグ」には、「ステレオ信号のアンバランス伝送用」と「モノラル信号のバランス伝送用」の2種類があるようにさらに規格が細分化されています。
同様に「(4)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像信号)」には前章で書かせていただいた通り、5種類の規格が混在・乱立していました。
- (1)2極プラグ(モノラル信号のアンバランス伝送用):1種類
- (2)3極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用 or モノラル信号のバランス伝送用):2種類
- (3)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク信号):2種類
- (4)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像信号):5種類
- (5)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+その他制御信号):1種類
- (6)4極プラグ(ステレオ信号のバランス伝送用):2種類
- (7)5極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+ノイズキャンセリングマイク用ステレオ信号):1種類
- (8)5極プラグ(ステレオ信号のバランス/アンバランス伝送用+アンバランス時のGND用):1種類
よって、これらを合わせてると、1+2+2+5+1+2+1+1=15種類の規格がミニプラグにおいては存在しています。
最も一般的で圧倒的に多く使われているのは、先っちょの線の数が2本の「(2)3極プラグ」で「ステレオ信号のアンバランス伝送用」の1種類ですが、それ以外にも想像以上に多くの規格が存在しており、特に先っちょの線の数が3本以上ある4極プラグ・5極プラグ場合は、注意が必要です。
カーオーディオのAUX接続などでも使用される最も一般的な3極のステレオミニプラグケーブル(オーディオケーブル)について、こちら”AUXケーブルの正しい選び方!“の記事にまとめましたので、もしよろしければ合わせてご参考にどうぞ。
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