2021年、音楽アプリ最大手のApple Musicが追加料金無で高音質なロスレス音源の提供を開始、これに追従する形で、ライバルのAmazon Musicは従来ロスレスに必要だった追加料金¥1,000の撤廃を発表しました。
かつてはロスレスの音楽が当たり前だったCDメディアに対し、後継メディアと言われる「聴き放題サービス」や「配信ダウンロードサービス」は、これまで圧縮音源の音質低下を当たり前としてきました。
もしかすると、少しでもCDの販売数を維持したい業界の思惑で、あえてCDよりも低音質にして差別化していたのかもしれません。
しかし、ほぼ業界標準かのように溢れかえっていた圧縮音源は、AppleやAmazonのこの衝撃的な発表により、一夜にしてロスレス音源に置き換わる流れになったのです。
誰しも、同じ価格なら高音質を望むのが自然な流れです。
ここでは、「ロスレス圧縮とは何か?/メリット/デメリット/ハイレゾとの違い/ロスレス音源の種類等」と「ロスレス音源を正しくお得に使う方法」について私が、ロスレス聴き放題アプリ使用歴2年、ロスレス/ハイレゾダウンロード使用歴6年の経験をベースに、詳しく書かせていただきます。
- ロスレスとは何か正確にはご存じ無い方
- ロスレスで無いロッシー(圧縮)音源(AAC, mp3)をメインで聴かれている方
- 同じ価格なら5.5倍の情報量の音質のよい音楽を聴きたいとお考えの方
は特に参考になるのではないかと思います。
⇒Amazon Music Unlimited (HD) の詳細 (Amazon 公式サイト)を確認
⇒Apple Music の詳細(Apple 公式サイト)を確認
ロスレス圧縮とは音質劣化無しで聴ける音源
ロスレス圧縮音源を正しくお得に使う方法について書かせていただく前に、「ロスレス圧縮音源とは何か?」について簡単に書かせていただきます。
ロスレス圧縮のロスレス音源(Apple Music/Amazon Music HDなど)
ロスレス圧縮音源またはロスレス音源とは、一般的に音楽CDの音質/情報量/解像度と比較して劣化が無い音源です。
ロスレス圧縮であれば、たとえ圧縮してファイル容量を小さくなっていても圧縮前の情報量を完全に再現することができます。
つまり、ロスレス圧縮は非圧縮(圧縮無しの状態)に戻せる圧縮技術なのです。
元に戻せることから可逆圧縮とも呼ばれます。
音楽ストリーミングアプリの場合、具体的には、Apple MusicやAmazon Music HDがロスレス音源にあたります。
ロスレスでない圧縮のロッシー音源(Spotify/YouTube Musicなど)
ロスレス圧縮に対し、多くの音楽配信ダウンロードサービスや音楽聴き放題サービスで使われている、AACやmp3等の圧縮音源は、ロスレスでは無いロッシー(ロスがある)と呼ばれる音源です。
ロッシー音源の圧縮は元に戻すことができず、ファイル容量を小さくした分、音楽の情報量が失われています。
元に戻せないので非可逆圧縮とも呼ばれます。
この場合、残念ながら音楽CDよりも音質が低下するのです。
データ量にすると、音楽CDのビットレートが1411kbpsであるのに対し、代表的な圧縮音源は約256kbps(YouTube MusicやSpotify等)なので5.5倍の情報量を持つCDの方が断然音が良いのです。
ハッキリ言うと、圧縮音源はいいイヤホンやいいアンプで聴いても多少効果はあるものの、大元のデータがCDとの比較では既に音質低下しており、申し訳ありませんが100%の性能は発揮できていないとも言えます。
音楽ストリーミングアプリの場合、具体的には、SpotifyやYouTube Music、Amazon Music Unlimitedがロッシー音源にあたります。
ロスレス圧縮の音質(ロッシー音質との違い)
ロスレス音源の最大のメリットは高音質であることです。
では、ロッシー(非可逆圧縮)音源とロスレス(可逆圧縮)音源の音質の差は具体的にどう感じるのでしょうか?
実はロッシーな非可逆圧縮音源でも正直パッと聴いただけでは、違いが分かりにくいです。 なぜなら圧縮技術も進歩しているからです。
そもそも音を圧縮するには、何らかの音を間引いて情報量を減らす必要があります。
この時、あからさまに何かの楽器の音が消されたり、ボーカルが消えたりしたら、音質劣化を通り越して、音楽として成立しなくなります。
実は音楽の圧縮技術は、心理音響モデルとも呼ばれ、大きな音の直後に鳴っている小さな音を対象に消す等、人間の耳に聴こえにくい音を間引いて圧縮し、気付かれにくいように容量を小さくできます。
では誰にも聴き分けれないかと言うと、そんなことは無く慣れてくると明らかに違いが分かるようになります。 一言で言うと、音の立体感に大きな違いがあります。
私の経験上、間引かれている多くの音は楽器やボーカルの反射成分など残響音です。
残響音であれば、多少間引かれても音楽として成立します。
しかし残響音が失われると、音楽が演奏されている場所の空間的な情報が失われ、音が平面的になってしまうのです。
高音質の見分け方に慣れ、ロッシーな圧縮音源の聴き分け方が身に付くと、立体感の無い平面的な音に物足りなさを感じるようになります。
少し乱暴なたとえ話をすると、
- 圧縮音源:日産スカイライン
- 非圧縮音源/ハイレゾ音源:日産スカイラインGTR
です。 興味の無い人にとってはパット見は同じ、確かにスペックや外観は違うが、分かる人にしか違いが分からないです(笑)。
ロスレス圧縮音源のメリット/デメリット
ロスレス圧縮音源のメリット
ロスレス圧縮のメリットは以下の通りです。
音楽CDと同じレベルの高音質なので、以下のメリットが得られます。
- 世の中の多くの曲の最高音質音源で聴ける → イヤホンやアンプを高音質化してるとさらに真価を発揮
- 家の中でスペースを取ってる音楽CDを思い切って処分できる → ファンで無いけどたまに聴きたいもの等は処分可能かも?
- アーティストが伝えたかった音により近い音で聴ける → 好きなアーティストの曲は最低でもCDレベルの高音質で聴くのがおすすめ(圧縮音源の5.5倍の情報量)
ロスレス圧縮音源のデメリット
逆にロスレス圧縮のデメリットは以下の通りです。
- ロッシー(圧縮)音源と比較するとファイルサイズが大きい → 64GBのメモリなら1,600曲程度は入るが圧縮音源だとさらに5倍の曲が入る
- 対応しているメディアがまだ少ない → メジャーなものだとまだAmazon Music HDとApple Musicぐらい
- サービスによっては価格が高い → ハイレゾダウンロードサービスは音楽CDよりも約1.5倍高額、聴き放題サービスなら逆に安い
ロスレス音源/ハイレゾ音源の違い
ちなみに、ロスレス音源とハイレゾ音源は似ているけど少し違います。
結論から言うと、
- ロスレス音源:音楽CD相当以上の音質の音源全て、ハイレゾ音源も音楽CDも含まれる
- ハイレゾ音源:ロスレス音源の中で音楽CDよりもさらに高音質な24bit/44.1kHz以上の解像度の音源
です。
ロスレス音質メディアの種類
主なロスレス音質の音源メディアとしては、以下の5種類が考えられます。 流通度は少し先の将来予測も含めた私の感覚です。
- ロスレス対応音楽聴き放題サービス(流通度:★★★★★)
- 音楽CD(流通度:★★★☆☆)
- ロスレス対応音楽ダウンロードサービス(流通度:★★☆☆☆)
- SACD(流通度:★☆☆☆☆)
- DVD-Audio(流通度:☆☆☆☆☆)
ロスレス対応音楽聴き放題サービス(Apple Music/Amazon Music HD/mora qualitasなど)は増加傾向
まだまだ普及途中の印象がある音楽聴き放題サービスですが、ロスレス音源に絞ると実は最も普及しているメディアの印象を受けます。
ロスレス対応の音楽聴き放題サービスは、
- Amazon Music HD:2019年9月ロスレス対応開始
mora qualitas:2019年11月サービス開始、2022年3月サービス終了- Apple Music:2021年6月ロスレス対応開始(アンドロイド対応は7月)
と、最近どんどん新たなサービスが始まり、盛り上がりを見せています。 今後も新たなサービス開始や、既存サービスのロスレス対応は増加傾向にあります。
ロスレス音質でも音楽CDは減衰傾向
一方、音楽CDはロスレス音質ではあるものの、CDメディア市場としては減衰しています。
実際、上図の通り音楽CD生産枚数は、2012年と2020年で比較すると半分以下(1.5億枚→0.7億枚)になっています。
ゼロになることは無いですが、多くの方が実感されている通り、今後もどんどん衰退していくとも予測されています。
ロスレス対応音楽ダウンロードサービス(e-onkyo music/moraの一部など)は停滞
ロスレス対応音楽ダウンロードサービスは停滞と聞くと、感覚に合わないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
普通に考えると、市場減衰する音楽CDメディアの移行先の本命がダウンロードサービスと考えられていたからです。
しかし、実際に移行した先のダウンロードサービスはロスレス音質では無く、ロッシー(圧縮)音質のダウンロードサービスでした。
つまり音楽配信ダウンロードサービスには2種類あります。
- ロスレス音質対応ダウンロードサービス(=事実上ハイレゾダウンロードサービス):普及停滞
- ロッシー(圧縮)音質のダウンロードサービス:これまではそこそこ普及
そして、ロスレス対応のダウンロードサービスは、現実的にはハイレゾダウンロードサービスしか無いのです。
残念ながらハイレゾ音源のダウンロード配信は、減衰しゆく音楽CDと同じく利用者が少ない印象です。
ロスレス音源の普及加速
今後は、Amazon MusicやApple Musicに限らずその他の音楽メディアもロスレス音源サービスへのアップグレードの追従が考えられます。
なぜなら、今現在圧縮音源しか配信していない各音楽メディアは「圧縮とロスレスの間にある音質差」という大きなハンディーを背負うことになるからです。
具体的には、「ロスレス音源への対応」または「圧縮音質継続する代わりの値下げ」のどちらかを迫られることになります。
同じ月々¥980なら音質がいい方がよいに決まっているからです。
しかし、値下げは現在提供している音源の著作権代(ロイヤリティー)を考慮すると現実的ではありません。
よって、ロスレス対応への追従が現実的なシナリオです。
これにより、音楽メディアには、以下2つの大きな流れが発生すると考えられます。
- 圧縮音源メディアの大きな後退または消滅(ロスレス音源への移行)
- 音楽CDメディアのさらなる後退加速(インターネット配信への移行)
既存メディアが完全に消滅することはありませんが、大きな時代の流れをもはや止めることはできないと思います。
特に音楽が好きでよく聴かれる方は、遅かれ早かれどこかのタイミングで音楽聴き放題サービスに乗り換えるタイミングが来るのです。
私も40代の年配世代なので実は当初保守的な考えを持っており、聴き放題サービスに否定的でしたが、Amazon Musicがロスレス対応した2019年、乗りかえを決断しました。
それでも心配だったので、最初は、”Amazon Music HD 無料お試し確認“から始めました。
Apple Musicがロスレス対応した2021年以降、間違いなく次の乗りかえタイミングの波が来ているのは間違いありません。
まぁ音楽CDが細々と売られている限りは、乗り遅れた所でまだ何も無いのも事実ですが・・・。
とは言え、自分に合ってるか試してみる価値はあると思います。
ロスレス圧縮音源を正しくお得に使う方法
ここからは具体的に、ロスレス圧縮音源を正しくお得に使う方法について書かせていただきます。
ロスレス(圧縮)音源の種類と使い方一覧
まず、ロスレス(圧縮)音源の具体的な種類と使い方の一覧です。 比較のためロスレス以外も記載させていただいているので、ロスレスには「★マーク」を付けました。
メディア の種類 |
音源種類 | サービス例 | タイ トル 数 (曲数) |
音質 | 料金 | 新曲が 聴ける 早さ |
---|---|---|---|---|---|---|
聴き放題 サービス |
★★ロスレス 音源 (CD音質音源 ~ ハイレゾ音源) |
Amazon Music HD |
◎ 7,500 万曲 以上 |
◎ 1,411 kbps 以上 |
△→○ ¥980/月(個人) ¥780/月(プライム会員) ¥1,480/月(ファミリー) |
◎ 発売日 以降に 即再生 開始 |
Apple Music | ◎ 9,000 万曲 以上 |
◎ 1,411 kbps 以上 |
○ ¥480/月(学生) ¥980/月(個人) ¥1,480/月(ファミリー) |
|||
圧縮音源 | YouTube Music |
◎ 8,000 万曲 以上 |
× 256 kbps |
○ ¥980/月 |
||
ダウン ロード サービス |
★ロスレス 音源 (ハイレゾ音源) |
e-onkyo Music |
× 数十 万曲 |
◎ 1,411 kbps 以上 |
△ 約¥3,200 /アルバム1枚 |
○ 発売日 以降に ダウン ロード 後 |
mora | ||||||
圧縮音源 | ○ | × 320 kbps |
△ 約¥2,500 /アルバム1枚 |
|||
音楽CD | ★ロスレス 音源 (CD音質音源) |
– | ○ | ○ 1,411 kbps |
○ 約¥2,500 /アルバム1枚 |
△ 発売日 以降に 配達or 店頭 購入後 |
結論から言うと、「★★マーク」を付けた聴き放題サービスのロスレス音源が一番おすすめです。
音質はもとより、曲数や料金、新曲が聴ける早さにおいて全面的に有利です。
ロスレス対応音楽聴き放題サービス一覧
さらに具体的に、代表的なロスレス対応の聴き放題サービスを比較一覧にすると以下のようになります。
高音質かつ楽曲数の多いサービスから順に並べてみました。
ロスレス 聴き放題 サービス名 |
月額料金 | 楽曲数 | オフ ライン 再生方法 |
音質 (ビット レート) |
対応機器 (オフライン 再生可否) |
お試し 無料 期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
★おすすめ Amazon Music HD |
→ ¥980 (個人) ¥780 (プライム 会員) ¥1,480 (ファミリー) |
約 7,500 万曲 以上 |
ダウン ロード (曲数 無限) |
~3,730 kbps (最大 192kHz/ 24bit ロスレス) |
iPhone・iPad・Androidスマホ/タブレット/パソコンのアプリ(オフライン再生可)、パソコンのブラウザ(オフライン再生不可) | 30日 |
★おすすめ Apple Music |
¥480 (学生) ¥980 (個人) ¥1,480 (ファミリー) |
約 9,000 万曲 以上 |
ダウン ロード (曲数 無限) |
未公表 (最大 192kHz/ 24bit ロスレス) |
iPhone、iPad、Androidスマホ/タブレット、パソコン、Apple TV(全てオフライン再生可) | 3ヶ月 |
qualitas |
(最大 96kHz/ 24bit ロスレス) |
|||||
Deezer HiFi |
¥1,470 | 約 3,600 万曲 |
ダウン ロード |
~1,411 kbps or ~320 kbps |
パソコン、ONKYO・Bang&Olufsen等の一部機器(1,411kbps CD音質で再生可) iPhone、iPad、Androidスマホ/タブレット(320kbps音質で再生可) |
30日 |
ロスレス対応の聴き放題サービスは、そもそもサービス数自体が少ないですが、現時点では誰がどう見ても楽曲数が圧倒的に多いAmazon Music HDまたはApple Musicがおすすめ です。
Amazonに対抗する形でSONY系のmora qualitasが2019年に開始されましたが、楽曲数は約500万曲と少ない中、2022年にサービス終了となりました。
こちら”Amazon Music HD比較試聴レビュー“の記事でAmazon MusicとApple Musicの音質を比較してみましたが、注意して聴き比べると実はAmazon Music HD の方が Apple Music よりも音がいいことが分かりました。
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2021年は、Amazon MusicやApple Musicなどサブスク音楽アプリの高音質化と価格破壊のターニングポイントになりました。 きっかけは、Apple Musicの「高音質ロスレス対応」と「ロスレス対応の追加料金無料」の発[…]
また、Amazon Music HD の具体的なおすすめポイントについては、こちら”Amazon Music HDが高音質無制限ダウンロード可能で最強な3つの理由“の別記事にて、詳しく書かせていただきました。 こちらも、もしよければ合わせてご参考にどうぞ。
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