AUX(エーユーエックス)とは、下図のような外部機器との接続プラグ(挿す方)・ジャックやポートとも呼ばれる端子(挿される方)類の総称です。
AUX端子に挿さるプラグは、例えば同じ3.5mmのミニプラグでもパッと見ただけでは分かりにくい微妙な違いと想像以上の多くの種類があります。例えば上図のプラグはパッと見は似てますが、よく見るとプラグの線の数とサイズが微妙に違います。
ここでは、見分けがつきにくく間違いやすいAUX端子・プラグを正しくお使いいただけるよう、現時点で存在するほぼ全ての種類のAUX端子・プラグを整理し、電子部品を開発する技術者である私の経験も踏まえて記事にまとめてみました。
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AUX端子とは?
AUXとは補助や予備の意味
まずはじめにAUX端子のAUXとは、何でしょうか?
「補助の」、「予備の」などの意味を持つ英語の「Auxiliary」の最初の3文字が起源で「AUX」です。 つまり、AUX端子とは、「補助端子」、「予備端子」といった意味になります。
AUXの読み方とはエーユーエックス
次に、AUXの読み方ですが、一般的には「エーユーエックス」、「オックス」、「オークス」と様々ですが、私のまわりのカーオーディオ技術者の間では、「エーユーエックス」と読んでいる人が多いです。
「エーユーエックス」と呼んでおけばとりあえず問題無いです。 「エーユーエックスって何?は?」と言われる確率は最も低いです。
AUX端子とは音声信号の予備入力端子
カーナビやカーオーディオのAUX端子の場合、標準で装備されているラジオやテレビといった音楽ソースに対し、ウォークマン・iPod・スマホなどの外部機器が接続できる予備の入力端子ということになります。
ところで、ウォークマン・iPod・スマホなどのイヤホンジャック(出力端子)やパソコンなどのマイク入力ジャック(入力端子)もAUX端子と同じか似たような形をしています。これは広い意味では、予備の端子(≒AUX端子)とも言えますが、 狭い意味では、ジャックの形が同じというだけで、本来の機能に対して予備的に外部機器がつながるわけではないので、AUX端子とは呼ばないという解釈もできます。
ただ、どちらの意味にせよ、AUXとは何かをあとから接続できる予備的な端子と捉えると分かりやすいと思います。
また、AUX端子に接続される入出力信号は、双方向の通信信号では無く片方向に流れる音声信号がメインなので、以下の2種類が存在します。
AUX端子の入出力による種類一覧 | |
---|---|
AUX IN端子 | 端子への音声入力 |
AUX OUT端子 | 端子からの音声出力 |
AUX端子とプラグの注意点
ここで、特に注意していただきたいことが1つあります。
それは、プラグが挿せてしまうからといって、間違った組み合わせで機器とケーブルを接続すると機器が壊れてしまう場合すらあるということです。例えば、以下のようなシーンです。
「スマホと車のAUX端子を接続したいけど、ケーブルなくしたっぽい…」
「似た感じのケーブル見つけたけど、ちゃんと挿せるやん!挿せるってことは使える!?」
「ビデオカメラとパソコンを接続したいけど、専用ケーブルとか使うんかなぁ…」
「あれ!?このスマホ用のケーブルちゃんと挿せるやん!挿せるってことは使える!?」
偶然、使えてしまう場合もあるかもしれませんが、接続して電源を入れた瞬間、音が出ない・ノイズが聞こえるなどの症状が現れるだけでなく、最悪、接続機器が壊れてしまう場合もあるのです。
AUX端子とイヤホンジャックの違い
広い意味でのAUX端子として最も馴染み深いのは、スマホ・iPad・ウォークマンなどのイヤホンジャックです。例えばスマホと接続するなら、機械の中で再生された音楽信号をイヤホンやスピーカーに向けて出力する側のAUX出力端子と考えられます。
一方で、一般的にAUX端子と言うと音楽信号が入力される側のAUX入力端子を指す場合が多いので、以下の観点でAUX端子とイヤホンジャックは全く違う別のものです。
AUX端子とイヤホンジャックの違い | |
---|---|
AUX端子 | 主にステレオミニタイプの入力端子 |
イヤホンジャック | 主にステレオミニタイプの出力端子 |
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AUX端子(ジャック/ポート)とフォーンプラグ
つづいて、AUX端子に挿せる具体的なプラグの種類について整理していきます。
よく見かける下図のミニプラグですが、正式にはフォーンプラグという名前のプラグの中の1つです。ちなみにこちらは3.5mmミニプラグの3極タイプです。
挿す側(オス側)をプラグと呼び、挿される側(メス側)を端子・ジャック・ポートと呼びます。 つまり下表の通りです。
AUXプラグと端子の違い | |
---|---|
AUXプラグ | 挿す側 (棒) |
AUX端子 AUXジャック AUXポート |
挿される側 (穴) |
日本語の「端子」は一般的にプラグとジャックの両方のことを指しますが、日常的には挿される側のジャックのことをAUX端子のように表現することが多いです。
下図のSONYのヘッドホンアンプのように複数のタイプのAUXジャックが装備されている機器もあります。
フォーンプラグ・ジャックには、大きさと構造(何極か)によりかなり多くの種類があります。
最も大事な注意ポイントは繰り返しになりますが、大きささえ合っていれば構造が合っていなくてもプラグがジャック(AUX端子の穴)に挿せてしまうことです。
AUX端子用プラグのサイズと構造
2.5/3.5/4.4/6.3mmのプラグサイズ違いによる分類
まずサイズについては、以下の4種類です。
AUXプラグサイズ一覧 | |
---|---|
マイクロプラグ (直径:2.5mm) |
主にICレコーダーなどの小型機器で採用 |
ミニプラグ (直径:3.5mm) |
主に音楽プレイヤーやパソコンなどの民生機器で採用 |
JEITAバランスプラグ (直径:4.4mm) |
JEITA(電子情報技術産業協会)が2016年に規格化したバランス接続用端子、ハイレゾウォークマンなどで採用 |
標準プラグ (直径:6.3mm) |
主に楽器や音響機材などで採用 |
ヘッドホン等では民生用機器とプロ用の業務用機器の明確な境目が存在しないので、ミニプラグのものと標準プラグのものが混在しています。
そこで、下の写真のような標準⇔ミニ変換プラグが用意されています。 標準プラグのヘッドホンをミニジャックのウォークマンに接続する場合などで私も絶賛愛用中です。
ちなみにこのステレオミニの変換プラグ。 最近では上記以外にも非常に多くの便利なタイプのものが存在します。 最新のステレオミニ変換プラグの価格やレビューはこちらからどうぞ。
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何極かのプラグ構造による分類
次に、プラグの構造(何極か)についてですが、見た目的には極の違いであれば先端の線の数で区別できます。
AUXプラグ極数一覧 | |
---|---|
2極プラグ | 先端の線が1本 |
3極プラグ | 先端の線が2本 |
4極プラグ | 先端の線が3本 |
5極プラグ | 先端の線が4本 |
線の部分で電気的に絶縁されているので、線の数+1の極数の信号を区別して伝送できるしくみです。
現状流通している主なプラグの構造(何極か)と信号の種類によって分類すると以下の8種類となります。
AUXプラグの極数別の用途一覧 | ||
---|---|---|
No. | 極数 | 用途 |
1) | 2極プラグ | モノラル信号のアンバランス伝送用 |
2) | 3極プラグ | ステレオ信号のアンバランス伝送用 or モノラル信号のバランス伝送用 |
3) | 4極プラグ | ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用 |
4) | ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用 | |
5) | ステレオ信号のアンバランス伝送用+その他制御用 | |
6) | ステレオ信号のバランス伝送用 | |
7) | 5極プラグ | ステレオ信号のアンバランス伝送用+ノイズキャンセリングマイク用 |
8) | ステレオ信号のバランス/アンバランス伝送用+アンバランス時のGND用 |
この中で一番メジャーでよく使用されているものは、3極プラグのミニプラグです。 よく聞くステレオミニプラグとは、基本的に(2)の3極ミニプラグのことを指します。カーナビ/カーオーディオで音楽を聴く場合も、3極のステレオミニプラグケーブルで接続するのが一般的です。
最も極数が多いのが下図のような5極のミニプラグです。 私KYOもお世話になってるSONYのノイズキャンセリング機能付ウォークマンなどに採用されています。 通常の左右ステレオ音声出力+グランド+左右のノイズキャンセル処理用マイク入力の合計5つ・・・プラグ上が線だらけです。
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線の数で区別できる2~3極ミニプラグ
先端の線の数が1本~2本の2極~3極プラグの場合は、先端の線の数にさえ気をつけていれば、大きな問題は起きません。
- ステレオで聴きたい場合(アンバランス伝送) → 先端から“左音声”→”右音声”→”グランド”の3極プラグを使用
- モノラルで聴きたい場合(バランス伝送) → 先端から“音声+”→”音声-”→”グランド”3極プラグを使用
- モノラルで聴きたい場合(アンバランス伝送) → 先端から“音声”→”グランド”の2極プラグを使用
ここで、バランス・アンバランスの2通りの伝送方式を書きましたが、通常はアンバランスで十分とご理解ください。
バランス伝送はアンバランス伝送よりも”グランドが安定”や”外部からのノイズに強い”などのメリットがありますが、楽器・業務用音響機器や一部の超高級民生機器を除くほとんどの民生機器ではバランス伝送に非対応です。ちなみにバランス伝送は平衡伝送とも呼ばれ、伝送信号と逆相の信号を同時に伝送することで、ノイズをキャンセルする技術です。 これに対しアンバランス伝送は不平衡伝送とも呼ばれ、シンプルにグランド信号を基準として、伝送信号を送ります。
よって、ステレオやモノラルの音声を聴く場合の先端の線の数が1本~2本のケーブル選びであれば、難しく考えず、
- 機器側がステレオ対応 → 先端の線が2本の3極プラグを使用
- 機器側がモノラル対応 → 先端の線が1本の2極プラグを使用
とすれば十分です。
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線の数でも区別できない4極ミニプラグ
4極以上のプラグには統一された規格がないため、様々な規格が乱立しています。また、標準・マイクロプラグについては4極以上のタイプはほぼ存在しないので、ここでは特にミニプラグについて書かせていただきます。
特に下図のような4極ミニプラグについては、プラグの線の数でも区別できないという見分け方が大変難しい事態になっています。
2極~3極プラグや5極プラグについては、先端の線の数にさえ気をつけていれば、それほど間違いやすい状況は発生しません。 しかし、この4極ミニプラグだけは規格がぐちゃぐちゃの状態です。
まず、この4極ミニプラグケーブル伝送される情報は、代表的なものとして以下3つがあげられます。
- ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用 → スマホ・携帯電話・パソコンなどのイヤホン+マイクなど
- ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用 → ビデオカメラ・スマホなどの音声+映像出力
- ステレオ信号のバランス伝送用 → ハイエンド音楽プレーヤー(ハイレゾウォークマン等)や高級アンプ
マイクの主な用途は、
- スマホ・携帯電話 → ハンズフリー通話・スカイプなどのTV電話/オンライン会議など
- パソコン → オンラインゲーム・スカイプなどのTV電話/オンライン会議・音声チャットなど
です。 最近は働き方改革の一環としてテレワーク導入が進んでいるので、スカイプなどのオンライン会議での利用が一番多いかもしれません。
次に代表例ごとに現状存在する主な規格・採用機器と注意点等を書かせていただきます。
ステレオアンバランス伝送+マイクの4極プラグ規格
“4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク信号)”では、以下の2つの規格が混在しています。
- CTIA(Cellular Telephone Industry Association)規格:先端から“左音声”→”右音声”→”グランド”→”マイク”
- OMTP(Open Mobile Terminal Platform)規格:先端から“左音声”→”右音声”→”マイク”→”グランド”
iPhoneがCTIA規格を採用していることもあり、最近はCTIA規格の製品が多く流通しています。
しかし、一部OMTP規格の製品も残っており、機器と別売りのケーブル・変換プラグを購入される際は、対応機器名・規格名を事前に確認いただくのがおすすめです。中には、”OMTP”や”CTIA”のような規格名の記載がない場合もありますので、その場合は「iPhone対応」のような対応機器名を確認してみてください。
私自身、オンライン会議で4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク信号)を頻繁に利用しますが、iPhoneやGalaxy S8/S20などの付属品マイク付きイヤホンをそのまま使用してますが、全く問題無しです。 実感としてもCTIA規格が主流な印象です。
ステレオアンバランス伝送+映像の4極プラグ規格
“4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像信号)”では、さらに以下の5つ程度の規格が混在しています。
もしかしたらまだ他にもあるかもしれません(笑)。 もう乱立というか、ぐちゃぐちゃもいいとこです。
- SONY等の製品に採用の規格:先端から“左音声”→”映像”→”グランド”→”右音声”
- Panasonic等の製品に採用の規格:先端から“右音声”→”グランド”→”映像”→”左音声”
- iPod等のアップル社製品・パイオニア等の製品に採用の規格:先端から“左音声”→”右音声”→”グランド”→”映像”
- フランスの家電メーカーArchos等の製品に採用の規格:先端から“右音声”→””左音声”→”グランド”→”映像”
- その他の製品に採用の規格:先端から“映像”→”左音声”→”右音声”→”グランド”
非常にややこしいいので、基本的には機器本体の付属ケーブルのみの使用がおすすめです。
しかしどうしても他機器に接続する上で、ケーブルの長さ不足や相手機器のプラグ形状違いといった理由で、新たにケーブルや変換プラグを購入しなければならない場合は、SONYやPanasonicなどの機器メーカー名や”左音声”→”映像”→”グランド”→”右音声”などの信号配列を念入りに確認いただくのがおすすめです。
ステレオバランス伝送の4極プラグ規格
厳密には規格化されていませんが、高音質化を目的として4極を使ってステレオ信号のバランス伝送(L+, R+, L-, R-など)を行う端子が登場しています。 これらは、ハイレゾウォークマンなどハイエンドの音楽プレーヤーやハイエンドのイヤホン・ヘッドフォンと共に登場しました。 現状、以下の2つ程度の規格が混在しています。
- SONY, OPPO系:先端から順に、L+, R+, L-, R-
- Astell&Kern系:先端から順に、R-,R+,L+,L-
ここでもステレオ信号のバランス伝送という同じ目的にもかかわらず、メーカーによって信号の配列が違うので、ケーブル接続を行う場合は注意が必要です。基本的には機器本体の付属ケーブルを使用するのが無難ですが、音楽プレーヤーとイヤホン・ヘッドホンのメーカーが違う場合、信号配列を念入りに確認いただいた上で、変換プラグや専用ケーブルが必要になる場合もあります。
AUX端子用3.5mmミニプラグ種類一覧まとめ
最後にAUX端子接続用の3.5mmミニプラグの規格の種類についてまとめてみます。
ミニプラグの構造(何極か)と信号の種類によって分類すると以下(1)~(8)の8種類でしたが、例えば「(2)3極プラグ」には、「ステレオ信号のアンバランス伝送用」と「モノラル信号のバランス伝送用」の2種類があるようにさらに規格が細分化されています。
同様に「(4)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像信号)」には前章で書かせていただいた通り、5種類の規格が混在・乱立していました。
AUXプラグの極数別の用途と種類一覧 | ||
---|---|---|
No. | 極数 | 用途 |
1) | 2極プラグ | モノラル信号のアンバランス伝送用:1種類 |
2) | 3極プラグ | ステレオ信号のアンバランス伝送用 or モノラル信号のバランス伝送用:2種類 |
3) | 4極プラグ | ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用:2種類 |
4) | ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用:5種類 | |
5) | ステレオ信号のアンバランス伝送用+その他制御用:1種類 | |
6) | ステレオ信号のバランス伝送用:2種類 | |
7) | 5極プラグ | ステレオ信号のアンバランス伝送用+ノイズキャンセリングマイク用:1種類 |
8) | ステレオ信号のバランス/アンバランス伝送用+アンバランス時のGND用:1種類 |
よって、これらを合わせてると、1+2+2+5+1+2+1+1=15種類の規格がミニプラグにおいては存在しています。
最も一般的で圧倒的に多く使われているのは、先端の線の数が2本の「(2)3極プラグ」で「ステレオ信号のアンバランス伝送用」の1種類ですが、それ以外にも想像以上に多くの規格が存在しており、特に先端の線の数が3本以上ある4極プラグ・5極プラグ場合は、注意が必要です。
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