ここでは、車のオーディオの音質が低下してしまう原因について分析していきます。
車の音質が低下する原因として、以下2つの切り口に分けて考えていきます。
- オーディオシステム部分による音質低下
- オーディオ入力部分による音質低下
オーディオシステム部分による3つの音質低下原因
オーディオのシステム部分における音質低下原因は以下3点が考えられます。
- 1) オーディオ部品性能・設計がよくない
- 2) 部品取付状態がよくない
- 3) 音質チューニング(バランス調整)がよくない
次章より、1点ずつ詳しく解説していきます。
1) オーディオ部品性能・設計がよくない
音がよくない原因の1つ目は、「部品の性能がよくない」です。さらにその部品についてですが、クルマの中で音楽を聴く際に音質を決定づける部品は、主に
- メディア再生機器(CD/DVDプレーヤー+ラジオチューナー内蔵一体型オーディオ・ナビなど)
- オーディオアンプ(メディア再生機器内蔵タイプまたは少し大型の外付けタイプ)
- 接続ケーブル
- スピーカー
の4つです。各部品が部品の内部からではなく、例えばノイズなどの外部から受ける影響については、次の章の”部品の取付状態”に大きく影響されるため、ここでは省略しました。
高価な部品であれば必ずしも音に関する性能がよいと言い切れるわけではありませんが、部品単品に関しては、一般的には高価な部品ほど音にとってよりよい材料・構造設計となっており、音質低下が抑えられている傾向にあります。
それぞれの部品において音質が低下してしまう詳細な理由は次の通りです。
メディア再生機器での音質低下理由
メディア再生機器部分での音質低下原因として、以下の内容が考えられます。
- CD、DVD、USB、スマホなどから信号を読み取る際の読取エラーやエラー訂正によるノイズ混入
- 再生機器内の電子回路上の周辺部からのノイズ信号混入
オーディオアンプでの音質低下理由
オーディオアンプ部分での音質低下原因としては、音楽信号増幅時の信号歪みや電子回路上の周辺部からのノイズ信号混入が考えられます。
接続ケーブルでの音質低下理由
ケーブル部分での音質低下原因としては、材料・設計特性による音楽信号の減衰・低下・歪みが考えられます。
スピーカーでの音質低下理由
スピーカー部分での材料・設計特性による音楽信号の低下・歪みが考えられます。
2) 部品の取付状態がよくない
2つ目の原因は、前章と同じく4つの部品について、「取付状態がよくない」からとなります。取付状態に関しては、部品単品とは真逆で、部品の価格・性能とはほとんど関係なく、いかに音質低下が抑えられる取付が実施されているかが重要となります。主に、
- メディア再生機器取付状態
- オーディオアンプ取付状態
- 接続ケーブル取付状態
- スピーカー取付状態
の4つの部品が影響しますが、特にスピーカーは取付方法により大きく音が変わってしまうので、正しく取付られているかが非常に重要です。部品ごとの詳細な音質低下の理由は以下の通りです。
メディア再生機器取付状態による音質低下理由
CDデッキなどのメディア再生機器を例えばオルタネーターの制御やパワーステアリングの制御などを行う大きな電流を必要とする制御機器+その配線の近くに配置すると強いノイズを受け、オーディオの信号にノイズが混じってしまう場合があります。
1つ目として、このように電気的なノイズを発生する部品+その配線の近くに配置されていることによる機器内部回路内へのノイズ混入が音質低下理由として考えられます。
このような電気的なノイズの問題に関しては、クルマの限られた車室内スペースの中でノイズ発生源から距離を離す以外の根本対策が無く、非常に対策が難しいです。
よって、自動車メーカーでの開発時点で対策が非常に重要であり、機器を後付けする際の最も大きな課題の1つと言えます。
また2つ目として、CDデッキなどのメディア再生機器本体の取付時に固定方法が弱いと、機器本体そのものが振動して取付周辺部分にコツコツ当たって異音が発生したり、またCD/DVDなど再生時に機械的に動くメディアの場合、音飛び発生につながったりします。
こちらに関しては、しっかりとした固定を行うということを徹底すれば、機器を後付けする際でも問題となりません。
オーディオアンプ取付状態による音質低下理由
メディア再生機器と同じく、アンプで増幅する前のオーディオ信号の処理や、場合によってはデジタルではなくアナログ信号の処理を行うオーディオアンプにとって、強いノイズ発生させる部品+その配線・の近くに配置されていることによる機器内部回路内へのノイズ混入が音質低下理由として考えられます。
また、機器本体固定方法が弱いことによる振動異音も同様に考えられます。
接続ケーブル取付状態による音質低下理由
強いノイズ発生する部品+その配線の近くに配置されることによる影響については既に書きましたが、メディア再生機器やオーディオアンプなどの部品同様、オーディオ信号やオーディオ機器行きの電流が流れる全ての配線ケーブルにとってもノイズは大敵です。
シールド線を使ったりノイズ源と距離を離したりすることである程度の対策は可能性ですが、特にアナログ信号をアンバランス(不平衡)伝送しているオーディオ信号線は、ノイズに対して最も弱いものの1つであるため、慎重なケーブル経路配置が重要です。
こちらに関しても、自動車メーカーでの開発時点で対策が非常に重要であり、機器を後付けする際の最も大きな課題の1つと言えます。
スピーカー取付状態による音質低下理由
最後にスピーカーの取付状態による音質低下理由についてですが、以下の5つが考えられます。
これまで書いたノイズや周辺部品との接触・共振による異音発生の問題が2点、スピーカーならではのオーディオ信号が空気中を伝わる音の波に変換された後の影響が3点考えられます。
- 強いノイズを発生させる部品・ケーブルの近くに配置されていることによる磁気回路内へのノイズ混入
- スピーカー本体固定方法が弱いことによる振動異音・音のビビりつき(周辺部品との共振)発生
- スピーカー本体取付角度・向きとクルマの乗員の耳位置のズレによる音質低下
- スピーカー本体前面部とスピーカーカバーまでの距離が長すぎることによる音質低下(前室効果)
- スピーカー本体前面部のスピーカーカバーの孔の面積不足による音質低下(開口率不足)
3) 音質チューニング(バランス調整)がよくない
最後に3つ目の音がよくない原因は、「音のバランス調整がよくない」です。
特にこの「音のバランス調整」こそが、1つ前の「取付状態」と合わせて、家庭用のオーディオ機器と大きく違うところになります。
例えば、家のリビングに置く用にスピーカー・アンプ・CDプレーヤーのコンポセットを買ってきたとします。ソファーに座って聴くとして、そのソファーに向け て2つのスピーカーを左右対象に設置します。その場合、その音質の90%は、そのコンポの部品の性能によって決定されます。
しかしクルマの場合、部品の性能によって音質が決定づけられるのは、音質全体の約20%でしかないのです。
それは、クルマの中の場合、家のリビングと違ってスピーカーの向き・配置と空間の狭さに限界があるからです。
例えば、多くのクルマで2WAY以上のシステムの場合のウーハースピーカーや1WAYの場合のフルレンジスピーカーは、フロントドアに取り付けられていますが、その向きは左右でお互い向き合っている方向です。
リビングの場合と比べ約90度違います。しかも向き合うということは、せっかくのステレオの音を打ち消しあう方向でもあるのです。
さらにフロントドア足元付近のスピーカー取付部から乗員の耳に届くまでに、フロントシートなど多くの障害物があり、リビングではほぼ発生しえない音の吸収や反射が起こります。
この音の吸収や反射をなるべく減らすために行うのが、「取付の工夫」です。
しかし、それでも残ってしまった音の吸収や反射を補正するのが、「音のバランス調整」なのです。
主に、
- タイムアライメント調整:各スピーカーから音が出るタイミングをあえてズラし、乗員の耳元に届くタイミングを揃える工夫で音の輪郭をはっきりさせる。
- 周波数特性カーブ調整:各周波数の音の強さの調整で吸収されて失われた音や、反射してずれた音を補正する。
の2つを行います。
クルマの場合、最終的な音質を決定づける要素の割合は、
- スピーカー・アンプなど部品の性能:約20%
- 特にスピーカーなど部品の取付状態:約40%
- 音のバランス調整:約40%
となります。
音のバランス調整がいかに大切であるか、どれほど最終的な音質に影響するか、ご理解いただけたでしょうか?
以上3つのオーディオシステム部分での音質低下要因についての対策方法としては、こちらの”カーオーディオの音質を向上させる2つの基本的方法“の記事をご覧ください。
オーディオ入力部分による3つの音質低下原因
オーディオのシステム部分における音質低下原因は以下3点が考えられます。
- 4) オーディオソースの音質がよくない
- 5) オーディオ機器のつなぎ方がよくない
- 6) その他ノイズ発生・圧縮処理などがよくない
次章より、1点ずつ詳しく解説していきます。
4) オーディオソースの音質がよくない
1つ目の音質低下要因は、再生する音楽データそのもの「ソースそのものの品質が低い」です。 今の世の中にはホントに様々な音楽ソースが存在します。
ソース・メディアの種類
放送系メディアを考えてみても、
- AMラジオ
- FMラジオ
- 衛星ラジオ
- インターネットラジオ
と非常に多様です。
また、パッケージメディアを考えてみても、
- カセットテープ(現状ほぼ無いですが・・・)
- MD(現状ほぼ無いですが・・・)
- CD(-DA)
- DVDオーディオ
- CD(-DA)のコピーデータを記録したCD-Rなどのメディア
- mp3/AAC/WMAなどの圧縮データが記録されたメディア
- mp3/AAC/WMA/FLAC/ALACなどのネット配信データが記録されたメディア
とさらに多様です。
この中で、特に現在でも多く利用されている
- FMラジオ
- CD(-DA)
- CD(-DA)のコピーデータを記録したCD-Rなどのメディア
- mp3/AAC/WMAなどの圧縮データが記録されたメディア
- mp3/AAC/WMA/FLAC/ALACなどのネット配信データが記録されたメディア
について、考えてみたいと思います。
ソース・メディア別ビットレート
今回、取り扱う上記メディアはFMラジオ以外すべてデジタル信号によって音が記録されたメディアですので、音質を決定づける1つの指標として、ビットレートを考えてみたいと思います。
FMラジオはアナログメディアですが、デジタルメディア相当として無理やり置きかえて考えてみます。
- FMラジオ:約96kbps
- mp3/AACなどの圧縮データを記録したメディア:事実上64~320kbps
- mp3/AACなどのネット配信データを記録したメディア:事実上64~320kbps
- CD(-DA)のコピーデータを記録したCD-Rなどのメディア:1,411kbps
- CD(-DA):1,411kbps
- FLAC/ALACなどのネット配信データが記録されたメディア:事実上1,411kbps以上
となります。
ビットレートを1秒間に耳に入ってくる音楽データの量と考えると、一般的にはその数字が大きいほうが情報量的に多く、録音元である生演奏やスタジオ録音中の音により近いもの=いい音であると言えます。
ですので、上記リストの上の方のビットレート低めのメディアほど、音質低下が大きいメディアとなります。
このように、使用するメディアによって、音質の低下度合が決まってしまう場合もあるのです。
5) 入力機器のつなぎ方がよくない
カーオーディオのメインユニットと呼ばれるCDデッキやラジオチューナーが内蔵されたメディア再生機器は、車のインストルメンタルパネルの中央、運転しながら手が届く位置に配置されている場合が多いです。
このメインユニットに対し、
- mp3を聴きたいのにCDしか再生できないなど好みのソースが再生できない
- 普段使っているiPod・ウォークマン等のポータブル機器を車の中でも聞きたい
などの理由で、ポータブル機器やCDチェンジャーなどの外部機器をメインユニットに新たに接続・追加して使用されている場合があるかと思います。
特にポータブル機器に関しては、実は1979年から販売されているウォークマンや2001年から販売されているiPodなどに代表されるポータブル音楽プレーヤー・最近のスマートフォンの急激な普及を追い風に、クルマの中でも急速にポータブル機器の利用シーンが拡大しつつあります。
実際、私KYOも純正のオーディオメインユニットに装備されているAUXミニジャック端子にステレオミニプラグケーブルを挿しウォークマンを接続して使用しています。
無線接続による音質低下
これら非常に便利なポータブル機器ですが、主に
- ケーブルで接続すると配線の取回しがわずらわしいので無線で接続したい
- ケーブルで接続しようにもメインユニット側にAUXやUSBなどの入力端子が無い
という、利便性と接続互換性の理由で、
- FMトランスミッター接続
- Bluetooth A2DP接続
といった無線接続方式が用いられることがあります。
利便性や接続互換性解決のためには仕方ないことかもしれませんが、音質という面からみると無線接続よりも有線接続の方が有利なことが多いです。
前章同様に音質をビットレートに置き換えて考えると、
- FMトランスミッターで無線接続 = FMラジオ:約96kbps
- Bluetooth A2DPで無線接続:事実上64~約200kbps
となります。
ここで、
- mp3/AAC/WMAなどの圧縮メディアが記録された記憶媒体:事実上64~320kbps
- CD(CD-DA):1,411kbps
であることを考えると、例えば、128kbpsのビットレートでmp3圧縮され既に音質が低下した音源であってもFMトランスミッターで無線伝送するとFM信号に変換されることでさらに音質が低下したり、CD音源であってもBluetooth A2DP(SBC)で無線伝送すると常にデジタル信号を使用しているのでノイズには強いものの無線伝送直前行われるSBC(Sub Band Codec)という不可逆圧縮により約200kbp以下に音質が低下したりする場合もあるのです。
6) その他ノイズ発生・圧縮処理などがよくない
メインユニットへの入力側での音質低下に関しては、これまでに書いてきた
- ソースの種類による音質の低下
- 無線接続による音質の低下
が支配的であると考えてよいと思います。
しかし、上記以外にも、使用環境にもよりますが、
- ポータブル機器をシガーソケット経由で充電・給電しながら再生する時に受ける電源ライン経由のノイズ付加
- ポータブル機器をケーブルで有線接続する時に不平衡(アンバランス)伝送であることによるノイズ付加
- オリジナルのプレスCDをCD-Rにコピーするときのデータコピーエラー要因による音質低下
- mp3などの圧縮音源をBluetooth(A2DP)伝送する際のSBCの2重圧縮による音質低下
などの音質低下要因がメインユニットへの入力側にはあります。
以上3つのオーディオ入力部分での音質低下要因についての対策方法としては、こちらの”ソース変更等による簡単な車の音質向上方法“の記事をご覧ください。
まとめ | 車の音質が低下する原因
最後にまとめさせていただくと、車の音質が低下する原因は、オーディオシステム部分とオーディオ入力部分の2ヶ所にあり、合わせると以下6つありました。
- 1) オーディオ部品性能・設計がよくない
- 2) 部品取付状態がよくない
- 3) 音質チューニング(バランス調整)がよくない
- 4) オーディオソースの音質がよくない
- 5) オーディオ機器のつなぎ方がよくない
- 6) その他ノイズ発生・圧縮処理などがよくない
こちら”カーオーディオの音質を向上させる2つの基本的方法“と”ソース変更等による簡単な車の音質向上方法“の音質向上方法の記事と合わせてお読みいただくことで、より理解が深まると思います。