車のスピーカーにはとても多くの種類があります。
コアキシャルスピーカー、天井スピーカー、サブウーハー、BOSEスピーカー、専門用語っぽいものから分かりそうで分かりにくいものまで・・・。
とは言え、音楽好きの方、オーディオにこだわりがある方にとっては、
- 特に自分の車にどのタイプのスピーカーが装着されているのか?
- カースピーカーはどのように選べばよいのか?
について、知っておきたいのではないでしょうか?
実はカースピーカーの世界では、
- コアキシャル:スピーカーの構造を示す名前
- 天井スピーカー:スピーカーの取り付け場所を示す名前
- サブウーハー:スピーカーの役割を示す名前
- BOSE:スピーカーのブランドを示す名前
と、そもそも種類分けの次元が違う中で様々なスピーカーの呼ばれ方があるので、意外とややこしいのです。
ここでは、ふだんカーオーディオの開発を行う私の技術者の視点も交えながら、なるべく分かりやすく知っておくと役立つカースピーカーの種類・選び方のポイントについて書かせていただきます。
この記事を読んでいただくことで、車のカタログやカー用品店・インターネットで販売されている様々なカースピーカーの役割と種類・選び方の知識を一通り身につけていただくことができます。
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カースピーカーの構造による分類・選び方
カースピーカーを種類分けする方法の1つとして、スピーカーの構造によって分類することができます。
車の中に取り付けられているカースピーカーの中で最も一般的かつメジャーなのは、フロントドアに取り付けられている直径16cm前後スピーカーです。
車によっては、フロントドアにスピーカーが取り付けられていなかったり、スペースの関係で直径10cm程度のさらに小型のスピーカーになってる場合もありますが、一般的なほとんどの車では、フロントドアに直径16cm前後のメインとなるスピーカーがあります。
下図は、3WAYセパレートスピーカーシステムの例ですが、フロントドアの一番下の一番大きな赤丸部分がメインのスピーカーです。
上から順に、
- 高音域の音を出力するツィーター
- 中音域の音を出力するミッドレンジ
- 低音域の音を出力するウーハー
と少しづつ直径が大きくなっていきます。
また下図のように、ドアの表面内装パネルを取り外すとスピーカーユニットが直接見えるので分かりやすいかと思います。(実際ツィーターは内装パネル側に装着されているので写真には写っていませんが・・・)
上図の例は3WAYスピーカーシステムでしたが、多くの車で採用されている2WAYスピーカーシステムを実現する場合は、
- 高音域の音を出力するツィーター
- 低音域の音を出力するウーハー
の2種類のスピーカーで構成されるケースが最も一般的です。
コアキシャルスピーカー
2WAYシステムを構成するツィーターとウーハーが下図のように1つのスピーカーユニットのように一体化されているものがコアキシャルスピーカーです。
構造上のバランス、音の出方のバランスを考慮し、通常は下図のようにウーハーユニット前面の中心部にツィーターユニットが亀の子のように固定されています。
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高音域と低音域を同じ場所から同時に出力するため、高音域と低音域それぞれの音の位相が合った状態で耳に届きやすいので、音の輪郭がはっきりクリアに聴こえやすいというメリットがあります。
以下の場合には、セパレートよりもコアキシャルの方がおすすめです。
- ダッシュボードの上やドアパネルの上にツィーターを取り付けるスペースが無い
- 見栄えの好みとしてダッシュボードの上はすっきりさせたいまたは別の物を置きたい
- 音像の上方定位よりも音のクリアさの方を優先させたい
セパレートスピーカー
2WAYシステムを構成するツィーターとウーハーが1つに一体化されているコアキシャルスピーカーに対し、文字通り別々の部品に分かれているのがセパレートスピーカーです。 下図のようにツィーターとウーハーは別部品です。 部品が別々なので、取り付け場所も別々になります。
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ツィーターが出力する高音域の音の方が指向性が強い、つまりどこから音が聴こえて来るかが分かりやすく、かつツィーターは部品のサイズも小さいため、ダッシュボードの上や、ドアパネルの上部などの比較的高い位置に取り付けられます。
以下の場合には、コアキシャルよりもセパレートの方がおすすめです。
- ダッシュボードの上やドアパネルの上にツィーターを取り付けるスペース確保OK
- 見栄えの好みとしてダッシュボードの上にツィーターが目立っていてもOK
- できる限り上方に音場を作りたい
カーナビ・カーオーディオユニット等の音質調整機能としてタイムアライメントのチューニングができる場合、ツィーターとウーハーの各取り付け場所から耳の位置までの距離が違っていても高音域と低音域の位相合わせをすることもできます。
カースピーカーの取り付け場所による分類
カースピーカーを種類分けする方法の1つとして、ドアやダッシュボード・天井など取り付け場所によって分類することができます。
例えば、トヨタアルファードに搭載されているJBLプレミアムサウンドシステム(17スピーカー)の各スピーカーの取り付け場所は以下の通りです。
JBLプレミアムサウンドシステム
A・B:インパネ 8cm ミッドレンジ/ツィーター
C・D:インパネ 8cm ミッドレンジ/ツィーター
E:フロントドア 7×10inch ウーハー
F:ルーフ 8cm ミッドレンジ
G:スライドドア 2.5cm ツィーター
H:スライドドア 17cm ミッドウーハー
I:ルーフ 8cm ミッドレンジ
J:バックドア 20cm サブウーハー
17個ものスピーカが取り付けてあるので、基本的なスピーカー取り付け場所は全て網羅されているというか埋まっています。
定番のドア取り付けスピーカーとして、フロントドアに7×10inch ウーハー(E)、スライドドアに17cm ミッドウーハー(H)が搭載されています。
ドアに比べるとスペースが限られているダッシュボードには、インパネ 8cm ミッドレンジ/ツィーター(A~D)が搭載されています。 スピーカーの直径は8cmとドア搭載のスピーカーよりはコンパクトです。
また天井にも、ルーフ 8cm ミッドレンジスピーカー(F, I)が搭載されています。 天井もドアと比べると高さ方向のスペースが狭かったり、取り付け重量が思いと天井で支えきれないので、スピーカーの直径は8cmとコンパクトなユニットが搭載されています。 天井にスピーカーを搭載することで、上方向からの音を含めた音場・音像を設計することができ、主に上方向の音の広がり・開放感を付加することができます。 車としては、そもそも広めのミニバンですが、音響的にさらに広がり感のある空間を構築することができます。
カースピーカーの役割による分類・選び方
カースピーカーを種類分けする方法の1つとして、センター・サテライト・サブウーハー・ウーハー・ミッドレンジ(スコーカー)・ツィーター・フルレンジなどスピーカーそのものの役割によって分類することができます。 実はこれらの横文字の名前は、
- 高音・中音・低音のどの音をメインで出す役割か?
- マルチチャンネル再生においてどんな役割か?
を表しています。 つまり、各スピーカーの役割分担としては、さらに2つに分けて考えます。
- 再生周波数カバーレンジによる役割分担
- マルチチャンネル音場構築のための構成要素による役割分担
再生周波数カバーレンジによる役割分担
一般的に、
- 直径が大きいスピーカー:低音域をひずみ無くキレイに再生するのが得意
- 直径が小さいスピーカー:高音域をひずみ無くキレイに再生するのが得意
フルレンジスピーカーという全周波数帯域を再生できるスピーカーもありますが、各スピーカーの得意な周波数レンジに分割してシステムを構築した方がスピーカーの数は増えるものの、ひずみの少ない再生という点においては有利となります。
スピーカー口径やスピーカーシステムの設計思想によって変わるものなので断定はできませんが、一般的な周波数レンジ分けは以下の通りです。
- 重低音(50Hz以下):サブウーハースピーカー
- 低音(50~400Hz):ウーハースピーカー
- 中音(400~2kHz):ミッドレンジスピーカー
- 高音(2kHz以上):ツィータースピーカー
周波数カバーレンジを各スピーカーユニットで分割すればするほどスピーカーの数が多くなりコストはかかりますが、よりひずみの少ない音質で再生することができます。
マルチチャンネル音場構築のための構成要素による役割分担
下図のようなホームシアターシステムでは、立体的に音を聴かせるために複数のスピーカーを分散配置します。
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マルチチャンネルシステムで最も一般的なものが、DVDやブルーレイの映像作品で採用されている5.1チャンネルシステムです。
- フロントセンタースピーカー:1チャンネル
- フロントスピーカー(左右):2チャンネル
- リアサテライトスピーカー(左右):2チャンネル
- サブウーハー:0.1チャンネル
で足し算すると5.1チャンネルになりますが、スピーカーの数で言うと0.1個というのは無いので、1+2+2+1=6個となります。
家の中のホームシアターシステムと同様に、5.1チャンネルシステムを車の中でも構築することは可能です。 5.1チャンネルの再生のために同じようにカースピーカーを6個(以上)配置してシステムを組むことになります。
サブウーハーが搭載されていない車には例えば以下のような後付けのサブウーハーを搭載します。
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マルチチャンネル再生に限らず、重低音が好みの方にはサブウーハーの増設はおすすめです。
サテライトスピーカーが搭載されていない車には例えば以下のような後付けのサテライトスピーカーを搭載します。
ただしサテライトスピーカーは、例えば前席(運転席・助手席)に対しては、後席(後部座席・2列目シート)用のドアスピーカーで代用することもできます。
センタースピーカーが搭載されていない車には例えば以下のような後付けのセンタースピーカーを搭載します。
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こちらのセンタースピーカーも厳密には5.1チャンネルシステムと呼べなくなる前提であれば、センタースピーカー用信号をフロント左右のスピーカーに振り分けることで、設置しない選択肢もあります。
純正スピーカーか市販(アフターパーツ)スピーカーかによる分類・選び方
カースピーカーを種類分けする方法の1つとして、自動車メーカーによって最初から装着されている純正スピーカーか、アフターパーツとして純正スピーカーとの交換や追加目的でカー用品店・カーオーディオ専門店・インターネットで販売されている市販スピーカーか、つまりスピーカーの装着形態よって分類することができます。
純正スピーカーにはさらに、純正高級ブランドスピーカーかノーブランドの純正汎用スピーカーかに分けられます。 よって、以下3つに分類できます。
- 純正専用チューニングスピーカー
- 純正汎用スピーカー
- 市販スピーカー
純正専用チューニングスピーカー
自動車メーカーによって最初から装着されている純正スピーカーのうち、オーディオシステムとして名前含めて訴求されている場合に装着されているスピーカーです。
- BOSEやJBLなどの高級ブランドオーディオシステム
- 自動車メーカーオリジナルのサウンドシステム
が装着されてる場合は、専用チューニングの高級スピーカーが装着されています。
高級ブランドオーディオシステムとは例えば、
- BOSEサウンドシステム(日産・マツダ・アウディ車等に採用)
- JBLプレミアムサウンドシステム(トヨタ車に採用)
- マークレビンソンプレミアムサウンドシステム(レクサス車に採用)
などがあります。
各自動車メーカーとオーディオメーカーがコラボして共同開発、具体的には各オーディオブランドのスピーカー・アンプが取り付けられており、専用の音響チューニングが行われています。 車のオプション価格は多少高くなりますが、手っ取り早く高音質を手に入れたい場合の有効な選択肢となります。
注意点としては、サンルーフ等のオプション装備と同じで、新車購入の際は車両注文時にオプション選択しておかなければならず、注文後の後付けはできません。
例えば、トヨタアルファードに搭載されているJBLプレミアムサウンドシステム(17スピーカー)の概要は以下の通りです。
JBLプレミアムサウンドシステム
高性能な12chアンプの採用により、広い室内空間で最適な音質を確保したJBL*1のサウンドシステムです。十分な低音再生のため専用サブウーハーをバックドアに設定。後席用のルーフスピーカーなど、17のスピーカーを最適にレイアウトしました。5.1chサラウンドシステムにも対応しています。また、音源のディテールを高く再現しながら、省電力・軽量化も同時に実現するGreenEdgeTMテクノロジーを採用し、低燃費・省スペースにも貢献しています。
A・B:インパネ 8cm ミッドレンジ/ツィーター
C・D:インパネ 8cm ミッドレンジ/ツィーター
E:フロントドア 7×10inch ウーハー
F:ルーフ 8cm ミッドレンジ
G:スライドドア 2.5cm ツィーター
H:スライドドア 17cm ミッドウーハー
I:ルーフ 8cm ミッドレンジ
J:バックドア 20cm サブウーハー
自動車メーカーオリジナルのサウンドシステムとは、例えばトヨタ・レクサス車の場合だとさらにいくつか種類を持っており、
- トヨタプレミアムサウンドシステム
- スーパーライブサウンドシステム
- レクサスプレミアムサウンドシステム
などがあります。 BOSEやJBLなど高級オーディオブランドとのコラボでは無いものの、場合によってはオーディオメーカーと共同開発するものの自動車ブランドを全面に訴求した専用チューニングのサウンドシステムです。 装着されているスピーカーは専用設計の高級スピーカーです。
例えば、トヨタランドクルーザーに搭載されているトヨタプレミアムサウンドシステム(18スピーカー)の概要は以下の通りです。
トヨタプレミアムサウンドシステム
ランドクルーザーの車室内にあわせて開発された12ch・DSPアンプと、徹底した音響解析に基づき最適に配置された18スピーカーシステムを搭載。特にルーフスピーカーは、左右のみならず上下にも広がりのある立体感のある音響空間を実現するとともに、バックドアのサテライトスピーカーは前後方向への広がりを表現しています。さらに、フロントにはツィーター、ミッドレンジスピーカー、ウーファーの3WAYシステムを、ラゲージサイドには20cmサブウーファーを配するなど、高音から重低音まで幅広くカバー。常に最良のサウンドをご堪能いただけます。
純正汎用スピーカー
自動車メーカーによって最初から装着されている純正スピーカーのうち、オーディオシステムとして名前含めて特に訴求されていない場合に装着されているスピーカーです。 逆に言うと、純正高級ブランドスピーカーではないほとんどの純正スピーカーが該当します。 特に、
- オーディオレスシステム
- 装着スピーカー数が8個以下の場合
は、純正汎用スピーカーが装着されている場合が多いです。
オーディオレスとは、ディーラーやカー用品店で後からカーナビ・カーオーディオを装着する前提で純正汎用スピーカーは装着されているものカーナビ・カーオーディオ本体が取り付けられていない状態の車です。 下図はトヨタハリアーの例ですが、ちょうどカーオーディオが入る大きさの穴(赤線枠部分)が開いていたり、黒いプラスチックのカバーが設定されていたりします。
オーディオレスシステムの場合、どんなカーナビ・カーオーディオが装着されるかが自動車メーカー側では分からないため、そもそもスピーカーを専用チューニングすることができないので、汎用スピーカーが装着されていると考えられます。
市販スピーカー
アフターパーツとしてカー用品店・ディーラー・カーオーディオ専門店・インターネットで販売されているスピーカーを市販スピーカーと呼びます。 ディーラーで販売されているスピーカーも、自動車メーカーの工場ではなくディーラー・販売店で装着される場合は純正スピーカーではなく、基本的に市販スピーカーです。
市販スピーカーの装着形態としては、以下2つのパターンが考えられます。
- 純正スピーカーとの交換で装着
- 純正スピーカーに追加で装着
純正スピーカーとの交換で装着する場合の定番パターンとしては、主にフロントドアに装着されている純正スピーカーを以下のようなコアキシャルスピーカーと呼ばれるツィーターとウーハーが一体となったスピーカーに変更するのが最も一般的です。
スピーカーの部品代だけなら1セット\10,000以下から購入でき、音質についても純正の汎用スピーカーと比べると劇的な音質向上が期待できます。
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次に純正スピーカーに追加で装着する場合の定番パターンとしては、以下のようなパワードサブウーハーを追加するのが最も一般的です。
サブウーハーの追加で注意したいのは、専用の外部アンプ増設を計画していない限り、アンプ内蔵(=パワード)タイプを選択しておくことです。 カーナビのサブウーハー出力には一般的にサブウーハーを駆動しきれるほどのアンプゲインはありません。
設置場所としては、フロントシート下やラゲージルームが一般的です。 ちなみに、例えば助手席シート下に設置する場合、車の真ん中ではなく左側にかたよって設置することになりますが、サブウーハーが出力する重低音は周波数特性として指向性が低いので、音の定位の崩れを気にする必要はありません。
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カースピーカーの種類・選び方まとめ
最後にあらためてカースピーカーの種類についてまとめてみます。 カースピーカーは、
- スピーカーの構造を示す名前
- スピーカーの取り付け場所を示す名前
- スピーカーの役割を示す名前
- スピーカーのブランドを示す名前
で種類分け・分類することができます。
つまり、同じスピーカーでも種類分けのしかたで、コアキシャルスピーカーでもあり、ドアスピーカーでもあり、JBLスピーカーでもある場合がありえます。
よって、カースピーカーはそもそも同じスピーカーでも違う名前で呼ばれることを理解いただいた上で、どの種類分け・分類上の名前かを確認の上、選ぶのがおすすめです。
ここではカースピーカーの種類・選び方について書かせていただきましたが、次のステップとしてカースピーカーの交換以外の方法も含めた車の音質向上方法全般について、こちら”車の音質を劇的に向上させる2つの対策[システム編] “の記事にまとめてみました。 もしよろしければ合わせてご参考にどうぞ。