マツダコネクト・BOSE(ボーズ)・JBL 等の純正高音質オーディオシステムが装着された車をお使いの方、またはご検討されている方、
実は、その純正オーディオのメリットを最大限活用しながら、さらに音質改善を行う方法があるのをご存知でしょうか?
ここでは、私KYOが純正オーディオのメリットを最大限活かしながら、実際、自分自身で行った音質改善方法とその効果を紹介させていただきます。
ちなみに実験台となった車は、私の愛車である旧型IS250(レクサス純正のマークレビンソンプレミアムサラウンドシステム装着車)です。
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純正高音質オーディオシステム装着車とは?
まずはじめに、”カーメーカー純正の高音質オーディオシステムとは何か?”について簡単に書かせていただきます。
純正高音質オーディオシステム装着車の一番のメリットは、最初からそれなりに音がいいクルマであることです。 ディーラーで納車されるタイミングで既に高音質のカーオーディオシステムが装着されています。
これらのカーオーディオシステムは多くの場合、カーメーカーとカーオーディオメーカーが共同で設計・開発し、クルマを組み立てる工場で他の部品といっしょにクルマへ取付けられます。 取付けられた後、カーメーカーの厳しい基準で検査され、その検査に合格したものだけが出荷されます。 今風に言うと、カーメーカーとオーディオブランド・オーディオメーカーのコラボです。
もちろん設計段階からエンジンなど他のクルマ用の部品と遜色ない厳しい基準で耐久性能などが保証される設計となっています。
具体的には、以下のカーメーカーのオーディオシステムが主に対象となります。
- トヨタ JBL装着車、トヨタパノラミックライブサウンド装着車、トヨタスーパーライブサウンド装着車
- レクサスプレミアムサウンド装着車、レクサスマークレビンソン装着車
- マツダコネクトBOSE(ボーズ)装着車
- 日産 BOSE(ボーズ)装着車
- スバル ハーマンカードン装着車
- 三菱 ロックフォード装着車
- その他輸入車等でBOSE(ボーズ)、ハーマンカードン、B&O等装着車
例として下図はトヨタヴェルファイア用に専用設計されたフロントドア用JBLスピーカーです。
逆に対象とならないオーディオシステムは以下の通りです。
- オーディオレスで販売されている車
- 既にカーオーディオシステムを交換・カスタムしている車
純正オーディオシステムのデメリット
マツダコネクト・BOSE(ボーズ)・JBL 等の純正オーディオシステム装着車では、ある程度以上の音響性能を最初から手に入れることができるメリットがあると書かせていただきました。
では、逆にデメリットは無いのでしょうか?
実は純正オーディオシステムには、後々さらなる音響性能のレベルアップ・音作りの方向性変更を行いたくなった場合、改造の自由度が低く大きな変更が行いにくいというデメリットがあります。 具体的には、以下2つのポイントで改造の自由度低いと考えられます。
- オーディオ操作パネル・表示ディスプレイが内装材と形状的に一体化されており、汎用的な2DINのユニットに交換しにくい
- オーディオシステム内の信号配線系が完全専用設計となっており、一部機器のみを汎用品等に交換しにくい
仮に、純正オーディオシステム装着車に対し大きな変更を行おうとすると、少しもったいないですが、結果として純正オーディオシステムを全てはぎ取って捨て、その後に全く新しい別のオーディオシステムをインストールするということになってしまうのです。
だからこそ、純正オーディオシステムに対して音響性能のレベルアップを行う場合は、純正オーディオをはぎ取ったりせずに、純正オーディオシステムをうまくを活かしながら行うのがおすすめです。
純正オーディオシステムとしてのマツダコネクトの例
最近のマツダ車にはマツダコネクト(通称:マツコネ)と呼ばれる新しいカーインフォテイメントシステムが装備されています。 主にオプション装備である高級オーディオシステムのBOSE(ボーズ)装着・非装着に関わらず、カーオーディオシステムのコントロールはこのマツダコネクトを介して行われます。
このマツダコネクトの最大の特徴は、下図のようなダッシュボードの最上面に配置された独立型のセンターディスプレイとシフトレバー付近のコンソールに配置されたダイヤル等のコントロール装置により、運転中にディスプレイから情報を得る際の少ない視線移動とブラインド操作を実現し、より安全運転に集中できるようにしたということです。 そして、これらの装置構成に最適なインテリアデザインを採用により、いわゆる2DINナビの装着スペースは排除されました。
これは、マツダコネクトが装備されたマツダ車を購入した場合、後から車の音質改善のために市販の高音質2DINナビ等をインストールするのは不可能であるということを意味します。
また、BOSE(ボーズ)非装着のマツダコネクトが装備された車を購入した場合に、後から音質改善のためにBOSE(ボーズ)装着のマツダコネクト装備車にアップグレードするのも現状は原則不可能です。 よって最新型アクセラ以降のマツダコネクト装備車において、”将来的に車の音質改善をしていきたい”とお考えの場合は、初めからBOSE(ボーズ)装着車を選択されることをおすすめします。
活かすべき純正オーディオのメリット
純正オーディオには様々なメリットがありますが、特にここでは、音響性能のレベルアップを行う場合でも活用(流用)しておきたい、純正オーディオの究極のメリットについて整理してみます。
車の中における5つの音質劣化要因
音楽が車の中でドライバー・乗員の耳に届くまでの音質劣化要因を下図にまとめてみました。
実は車の中は家の中と比較して、それなりに大きな音量で聴ける等のメリットもある反面、様々な音質劣化要因があります。
ここでは、以下5つの音質劣化要因について考えてみます。
- ガラス・内装材・シートによる音の反射・吸収
- 各スピーカーからの距離差による音の位相ズレ
- スピーカー周辺部の振動・ビビリによる音の劣化
- 車内外からの騒音・ノイズによる音のにごり
- パワーアンプの応答遅れ・ひずみ等による音質劣化
純正高音質オーディオシステムが解決する2つの音質劣化要因
車の中における5つの音質劣化要因に対し、以下の2つは、一般的に純正高音質オーディオシステムによって解決することができます。
- ガラス・内装材・シートによる音の反射・吸収
- 各スピーカーからの距離差による音の位相ズレ
具体的には、音質劣化を引き起こすガラス・内装材・シート・各スピーカーの位置関係による音の反射・吸収・位相ズレを予め予測し、反射・吸収・位相ズレが起こったその結果、一番自然な音質になるように音響チューニングを行います。 例えば、
- 内装材・シートに吸収される音域の音は吸収されることを想定して予め大きくしておく
- 耳から遠い位置にあるスピーカーの音は遅れて届くので、耳から近い位置にあるスピーカー音を少し遅らせて出し、タイミングを合わせる
などです。
純正オーディオシステム開発時には、ドライバー・乗員の耳の位置にスピーカーを設置し、各スピーカーから出される信号がどのように聴こえるかを徹底的に解析し、最終的にドライバー・乗員の耳の位置で自然に聴こえるように周波数特性(各音域の音量)・位相特性(各スピーカーから出す音のタイミング)を細かく調整します。
ちなみに、車の中はリスニング環境としていくつかのデメリットがあります。 例えば、家の中の環境では発生しにくいガラスによる音の反射・各スピーカーの位置関係からの音の位相ズレなどの発生です。
しかし、逆に車の中のリスニング環境ならではのメリットもあります。 例えば、人が自由に動き回れる家の中と違ってドライバー・乗員が決まった位置に固定されているので、音のスイートスポットを絞った音響チューニングがしやすいなどです。
このような音響チューニングこそが、車の中ならではの環境を活かして音質劣化を最小限に食い止める究極の方法なのです。
音響チューニング処理は、以下の図の通り、一般的に主にパワーアンプ前段のDSP(Digital Signal Processor)によって行われます。
純正オーディオを活かしたさらなる音質改善方法
終わりのある音質改善方法
車の中における5つの音質劣化要因に対し、以下の2つは、一般的に純正高音質オーディオシステムで行われてる音響チューニングによって解決できると書かせていただきました。
- ガラス・内装材・シートによる音の反射・吸収
- 各スピーカーからの距離差による音の位相ズレ
つまり、音響チューニングを行うことで、ガラス・内装材・シートによる音の反射・吸収や、各スピーカーからの距離差による音の位相ズレは、対策を基本やり切ることができます。
仮にさらに対策を徹底しようとしたところで、周波数軸・時間軸の分解能を上げる等の処理を向上させるくらいですが、元の音楽ソースの解像度以上にしてもあまり意味がありません。 つまり、あるレベルで対策効果が頭打ちとなり、対策に終わりがあります。
終わりのない音質改善方法
当然、残りの以下3つに関しても、純正高音質オーディオシステム装着車において、全く対策がされていないわけではありません。
しかし、以下3つのは上記2つの音質劣化要因と比べて、対策に終わりがありません。
- スピーカー周辺部の振動・ビビリによる音の劣化
- 車内外からの騒音・ノイズによる音のにごり
- パワーアンプの応答遅れ・ひずみ等による音質劣化
つまり、対策を行いだすとキリが無いため、車メーカーとしては無限にコストをかけられない中、あるレベルで妥協するということになります。
例えば、どんな高級車でもガソリンエンジン車の場合、車に乗っていて全くエンジン音が聞こえないということはありません。 ありとあらゆる隙間に無限に防音材を施行し、ありとあらゆる振動系に無限に対策を行えば、物理的にエンジン音が車内に聞こえない車は作れるかもしれません。 しかし、あまりにも費用対効果が悪く、無駄に高くて重たい車になってしまうため、通常は適度にエンジン音を聞かせる、場合によっては、エンジン音の音色をチューニングして、耳障りにならずにあえて聞かせるという手法が取られます。
よって、オーディオの音をよくするために騒音をおさえる対策も同じ話で、車メーカーとしては100%対策完了せずにあるレベルで対策完了とします。
逆に言うと、上記3つの音質劣化要因に対しては、純正オーディオシステムを活用しながらも、まだ改善の余地が残されていると言えます。
この終わりのない音質改善のアプローチこそが、車メーカーが最後までやり切れない、純正オーディオシステムが活かせる音質改善方法なのです。
純正オーディオシステムを活かした音質改善方法
具体的に、純正オーディオシステムを活用しながら効果が期待できる音質改善方法とは以下3つです。
- デッドニング施行
- 静音計画等の車内静粛性改善
- プロセッサー・プリアンプ追加(純正アンプの前段割込接続前提)
図で示すと以下のようになります。
次章より、詳細について書かせていただきます。
デッドニング施行
私が実際にドアにデッドニングを施行した例です。
ドアに限らず、どこに施行しても少なからず効果はありますが、一般的にはフロントドアが最もデッドニング効果が高い部位です。
具体的には、
- サービスホールなどの穴をふさぐ
- 内装材が干渉しそうなところには吸音材(スポンジ)を貼って異音防止
- 平べったい部分を中心に制振材を貼って振動防止
- スピーカー周辺には吸音材を貼って余分な音漏れ防止
等を行います。
以下写真のようなデッドニングキットも販売されてますので、お手軽に自分で施行してみるのもアリかもしれません。 私KYOの場合、エーモン工業の音楽計画デッドニングキットをネットで購入し、せっかくなので自分で施行しました。 ドア内装パネルの取り外し等、個人的に不慣れな作業もあったので2日程度かかってしまいましたが、時間さえあれば、そこまで難易度の高い作業ではないという印象です。
ちなみに、デッドニング施行の効果としては、明らかに音の締まりが良くなり、音の輪郭がより際立つようになった印象です。
また、今までより少し大きめの音量で聴き続けても、聴き疲れしにくくなった気がします。
静音計画等の車内静粛性改善
エーモン工業から、静音計画という言葉の通り車内の静粛性を向上させ、より静かな環境で音楽を楽しめるようになる商品が販売されています。
具体的には、下図のようなドアが合わさる部分に細長いゴムを貼り付け、ドアが閉まった時の密閉性を改善させます。
詳しくは、こちら”エーモン静音計画の満足度ランキング!実は静音効果だけじゃない!“の記事で、エーモン静音計画シリーズ製品を私が自腹取り付けした実体験としてまとめましたので、もしよければご参考にどうぞ。
プロセッサー・プリアンプ追加(純正アンプの前段割込接続前提)
装着できる車とできない車があるため、オールマイティーな音質改善方法ではありませんが、プロセッサー・プリアンプの追加も場合によっては効果的な音質改善方法となります。 サイバーストーク社の”JOYN SMART STATION”やサウンドサイエンス社の”サウンドシャキット”などが有名どころです。
実は先日、サイバーストーク様のご好意で、私KYOの愛車であるレクサス旧型ISに”JOYN SMART STATION + サウンドアップキット”という”プリアンプ+接続ケーブルセット”のデモ機を取り付けていただきました。
旧型ISの場合、下図のように純正のパワーアンプはスペアタイヤ横に設置されているので、そこから配線を取り出し、パワーアンプの前段に割り込ませる形でプリアンプ部の”JOYN SMART STATION”を取り付けます。
ここで、サイバーストーク JOYN SMART STATION等のプロセッサー・プリアンプを純正オーディオと共存させる場合、オーディオデッキからの音声出力信号を取得できるかどうかが対応可否の分かれ目となります。 つまり、オーディオデッキからの音声出力信号を取得できない場合は装着不可となります。
JOYN SMART STATIONをISに取り付ける場合、アンプ本体は上図のように設置し、コントローラー部はLANケーブルで室内へ引き込んで以下のように運転席から操作できる位置に配置します。 思ってたよりも配線処理は簡単でした。 この簡単に配線処理できるセット一式がサウンドアップキットと呼ばれており、各純正サウンドシステム毎に専用設計となっています。
今回はレクサス用を使用してみましたが、マークレビンソン有無に関わらず共通設計になっています。 ちなみにマツダコネクトの場合は、BOSEシステム有無で品番が異なるようです。
実は、私KYO自身がプロセッサー・プリアンプを純正オーディオと共存させてセットアップさせた経験がサイバーストーク JOYN SMART STATIONのみなので、プロセッサー・プリアンプの追加の一般的な感想というよりは、サイバーストークのJOYN SMART STATIONの感想となってしまいますが、音質改善効果が得られたというのが正直なところです。
特に、中低域のスピード感、音の輪郭の際立ち方は驚くほどのレベルでした。
正直、マークレビンソンの音質がさらにここまで向上するとは思いませんでした。
ただし好みの問題として、ハイレゾ音源をソースにした場合の高音の響き・艶感が個人的に目指したい音のイメージと少し違ったので、即お買い上げには至りませんでした。
↓↓JOYN SMART STATION本体↓↓
↓↓サウンドアップキット(マツダコネクトBOSEサウンドシステム車用)↓↓
このように、プロセッサー・プリアンプの追加は、大もとの音楽信号の流れに割り込ませることで成立させるので、多かれ少なかれ音質そのものを変えることになります。 純正オーディオを活かしながらも、大きく効果が表れる分、音の好みについては大きく意見が分かれる諸刃の剣の音質改善方法かもしれません。
純正オーディオを活かすことができない音質改善方法
最後に、一般的には音質改善に有効な方法とされているものの、純正オーディオシステムを活かすという観点では、効果が期待できない音質改善方法について、整理しておきたいと思います。
具体的には、以下3つの方法です。
- スピーカー交換
- サブウーハーやツィーター等のスピーカー追加
- アンプ交換(再チューニング無前提)
確かに、より高級で性能の良いスピーカーへの交換・追加により、より高い音響性能が得られることは間違いありません。
しかし、”カーオーディオの音質を劇的に向上させるたった2つの基本的方法! “の記事にも書かせていただきましたが、車の場合、最終的な音質を決定づける要素の割合は、
- スピーカー・アンプなど部品の性能:約20%
- 特にスピーカーなど部品の取付状態:約40%
- 音のチューニング(バランス調整):約40%
です。 なんと取付状態と音のチューニング結果で音質の80%が決まってしまうのです。
また、そもそもスピーカーはそれぞれ音響特性を持っており、純正オーディオシステムのチューニング処理は、純正スピーカーの音響特性に対して、最終的な音響性能の作り込みが行われています。 スピーカー交換により多少スピーカーの性能が高まったところで、音響性能にとって支配的な音響チューニングの結果が活かせなくなるのです。
よって、
- スピーカー交換
- サブウーハーやツィーター等のスピーカー追加
- アンプ交換(再チューニング無前提)
によって、各部品が持つ音響性能に応じたある程度の音質向上にはつながりますが、各部品が本来持つ音響性能を100%出し切るには、部品交換だけでなく取付状態の調整と音のチューニングが必須となります。