ハイレゾ対応スピーカーはハイレゾ音源再生に絶対必要なのか?

ハイレゾ音源の普及と共に、新しく発売されるスピーカー・イヤホン・ヘッドホンに”ハイレゾ対応“などと書かれたものが出てきました。

ここで一番気になるのが、「”ハイレゾ音源”を再生するには、”ハイレゾ対応スピーカー””ハイレゾ対応イヤホン・ヘッドホン”絶対必要なのか?」ということです。

カーオーディオ用スピーカー

イヤホンやヘッドホンならまだしも、もしも”スピーカーもハイレゾ対応が必要“ってなると、ハイレゾを聴くことに対してなにか急にハードルが上がるように感じます・・・スピーカーなんて簡単に買い替えるものではないですし。

たとえば、既に部屋に置いているスピーカーをハイレゾを聴くためだけに今から買い替えないといけないことになってしまします。

さらに車の場合を考えても、たとえば、ハイレゾウォークマンやXperiaなどのハイレゾ対応スマホをカーオーディオに接続して車の中でちょっとハイレゾ音源を聴いてみたいのだけなのに、装着されているスピーカーを全部交換しないといけないことになってしまいます・・・ホントに!?
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確かに、ソニーは公式見解として、ハイレゾ音源再生にはハイレゾ対応のイヤホン・ヘッドホン・スピーカーを推奨しています。

実際、ソニーのお客様相談窓口に問い合わせてみても、車の中でハイレゾウォークマンをカーオーディオに接続して音楽を聴く場合、車のスピーカーがハイレゾ対応でなければハイレゾならではの高音質はあまり実感できない可能性が高いとの回答がありました。

しかし、実際に5年以上ハイレゾ音源をほぼ毎日、車や家の中で聴いてきた私としては、ハイレゾ対応でないスピーカーでもハイレゾならではの高音質は楽しめると考えています。

なぜなら、実際に私がハイレゾ対応と明記されていないスピーカーでハイレゾ音源と非ハイレゾ音源の聴き比べを何度もしてみたところ、それなりに音の違いが毎回感じられたからです。 ただし、最初は聴き方に多少のコツが必要です・・・聴き方のコツについては、こちら”ハイレゾで失敗しないための5つの注意点と音質の違いが分かる方法“を参考にどうぞ。

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ハイレゾならではの音 vs 通常の音の違いとは?

まず、ハイレゾ音源と通常の音源の差・音質の違いとは何か?について考えてみます。 ハイレゾ音源と通常の音源の差はPCM波形(音楽信号を横軸時間、縦軸音の大きさとした時間波形)という信号波形で考えてみると以下の2つあります。

  • 再生周波数帯20kHzよりも高い
  • 量子化ビット数16bitよりも高い(細かい)

ここでは説明を分かりやすくするために、サンプリングレート44.1kHz以上のハイレゾ音源を例として考えました。 当然、サンプリングレート44.1kHzのハイレゾ音源も存在します。

この信号波形の差が音にどのような印象を与えるかというと、以下の2つとなります。

  • より高音までしっかり音が抜け、こもった感じがしない自然な音質
  • 音のリアルさ臨場感がより分かりやすく、生で演奏を聴いている音質に近づく

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ハイレゾならではの音質1:再生周波数帯域の広さ→突き抜けるようにクリアな高音域の音

一般的に人間の耳に聞こえる周波数は約20kHzといわれています。

では、再生周波数帯が20kHzよりも高いハイレゾ音源は人間の耳にとって意味の無いものなのでしょうか?

それは少し違います。 実は人間は耳以外の骨など体の一部でも音を聞けるというか感じることができます。 少しオカルトちっくに感じられるかもしれませんが、有名な骨伝導もその1つです。

20kHzよりも高い音だけ聴くと分かりづらいですが、

  • 20kHzよりも高い音が含まれた音
  • 20kHzよりも高い音が含まれていない音

の2つを聞き比べると、やはり音の違いというか印象の違いを感じ取れるのです。

そしてそれは、CDなどに収録するために意図的に人工的に20kHzよりも高い音をすべてカットした音源よりも、より自然な音であり心地よい印象を受けます。

 

ハイレゾならではの音質2:解像度の高さ→臨場感・音像輪郭がリアル

1秒あたりに何回音をサンプリングするか(記録するか)ということに対し、そのサンプリングを行う際に音の大きさを何段階で記録するかが量子化ビット数です。 曲の中の大きい音と小さい音は当然違うものとして記録されますが、微妙に大きさが違う音をどこまで細かく区別して記録するかというイメージです。

録音機器の性能に任せて量子化ビット数を上げていくことは可能ですが、キリが無いので例えば音楽CDの場合は規格で16bit(=2の16乗)の65,536段階の細かさで音を記録すると定められました。 これに対し、現在流通しているハイレゾ音源は24bitのものが主流となっています。

16bitと24bitの音の違い。 私の印象としては、聞いた瞬間全然違うというものではありません。 しかし聞き比べると、人間がCDなどに収録するために意図的に65,536段階に分断して記録した音源よりも、16,777,216段階で記録した音源の方がより自然な音であり心地よい印象を受けます。

具体的には、

  • 生演奏の場にいるような臨場感
  • はっきとしてぼやけない音像・音の輪郭など音のリアルさ
  • 小さく細かい音まで取りこぼさずに聴こえる音の濃密さ

が感じ取れます。

 

ハイレゾ対応でないスピーカーでもハイレゾならではの高音質が楽しめる理由

ハイレゾ音源再生対応スピーカーに求められる条件

ハイレゾならではの高音質は、

  • より高音までしっかり音が抜け、こもった感じがしない自然な音質
  • 音のリアルさ、臨場感がより分かりやすく、生で演奏を聴いている音質に近づく

であり、それをもたらす理由は、

  • 再生周波数帯が20kHzよりも高い
  • 量子化ビット数が16bitよりも高い

であると書きました。

ここで、本題である”ハイレゾ音源の再生に対応したスピーカー”について考えてみます。 つまり、”ハイレゾ音源の再生に対応したスピーカー”に求められる条件を単純にあげると、

  • 20kHzよりも高い音を出せるスピーカー
  • 16bitよりも高い量子化ビット数の音を再現して出せるスピーカー

となります。

実は、このような性能は、実はハイレゾ対応のスピーカーでなくとも持っている場合も多々あるのです!

 

ハイレゾ対応でなくても20kHzよりも高い音を出せるスピーカーは存在

20kHzよりも高い音。

実は普通のツィータースピーカー(2~3cm程度の口径の高音用スピーカー)でも再生可能です。

カースピーカーの場合、ドアミラー裏の室内側やAピラー・ダッシュボードの両端面に搭載されていることが多いです。

一般的に多くの車に採用されている15~17cm程度の口径のウーハースピーカーと2~3cm程度の口径のツィータースピーカーの2WAYシステムの周波数特性は以下のとおりです。 若干の落ち込みがある場合もありますが、30kHz程度までは十分音が出ていますし、それより高い音も急激にカットされるわけではなく、徐々に音が小さくなっていくイメージです。

ハイレゾ対応でないスピーカーの周波数特性

当然、ハイレゾ対応のスピーカーであればもっと高い音までガンガン出せるのかもしれませんが、それは耳で聞く音ではなく体で感じる音の領域なので、極めて大きな差があるわけではありません

例えば、以下写真の¥10,000~15,000の価格帯の一般的なカーオーディオ用2WAYスピーカー(人気のカロッツェリア TS-F1730S/TS-F1730(17cm口径ウーファーと2.9cm口径のツィーターの組み合わせ))の場合、両方とも再生周波数帯域は30Hz~26kHzです。 ”ハイレゾ対応”とも書かれていません。

ここで、この26kHzという周波数は、そのスピーカーが出しきれる最も高い周波数(音の高さ)を表すものではありません。 ほぼフラットに出せる音圧(音の大きさ)から3dB(人間の感覚では音の大きさが半分に聞こえる大きさ)分だけ下がった周波数(音の高さ)というだけで、急に26kHzより高い音が聞こえなくなるわけではないのです。

 

ハイレゾ対応でなくても16bitよりも高い量子化ビット数の音を再現できるスピーカーは存在

音の強弱の繊細で忠実な再現。 リアルで繊細な音の強弱を忠実に再現するスピーカーはハイレゾ対応とは関係なく、従来からスピーカー設計の目指すべき1つのゴールです。

音とは空気の振動で、スピーカーは通常コーンと呼ばれる部分が振動して空気の振動(=音)を作り出しますが、これまでのCD以下の音源を再生するスピーカーだからってその振動の大きさをあえて16bit(=65,536)段階に抑えて設計されていたわけではありません(笑)。

つまり、ハイレゾ対応スピーカーでないスピーカーでも、通常は価格に比例するスピーカー自身の音響性能が良ければ良いほど、より音のリアルさの再現性は高いのです。

実は、ハイレゾ対応という表記が登場する前から従来の高級オーディオアンプは、増幅時のひずみを最小化するためなどの理由で、アンプの内部処理をあえて高ビットで行う場合もあります。 当然、そのシステムへの接続を推奨されているスピーカーはハイレゾ対応でなくとも、より高ビットな次元での再生特性を持っています。

 

ハイレゾ対応スピーカーの必要性まとめ

結論として、「ハイレゾ対応でないスピーカーでもハイレゾならではの高音質を楽しむことは可能」です。

つまり、「ハイレゾ音源再生にハイレゾ対応スピーカーの絶対的な必要性は無し」です。

実際、私が自分の車のカーオーディオシステム用スピーカー(10年以上前の設計で全くハイレゾ対応とは書かれていない)で、

  • ハイレゾ音源と非ハイレゾ音源の聴き比べ
  • ソニーハイレゾウォークマンの疑似ハイレゾ音質変換アップスケーリング”DSEE-HX”のオン・オフの聴き比べ

を行ってみましたが、違いが分かりやすい曲・分かりにくい曲はあるものの違いを感じることはできました

理論的にも実感としても、ハイレゾ対応スピーカーでなくとも、それなりに性能のよいスピーカーであれば、十分ハイレゾ相当の効果を味わえるのです。

最後に1点だけ補足させていただくと、「ハイレゾ対応スピーカーの存在意義は、それはそれで有り」と考えています。

ハイレゾ対応スピーカーはハイレゾ音源により適したチューニングが行われているため、ハイレゾ音源のポテンシャルをより多く引き出す再生が期待できます。

これはチューニングレベルの話であり、もちろんCDのような非ハイレゾ音源でも問題なく再生できます。 同様にCDの再生を想定して設計されたハイレゾ非対応スピーカーでも、スピーカーによる性能差はあるものの、ハイレゾ音源ならではの音質を引き出す再生を行えるポテンシャルはあるのです。

もし、スピーカーがハイレゾ非対応であることを心配してハイレゾの導入を迷われているのであれば、まずは今のスピーカー環境で簡易的にハイレゾを体験されてみてはいかがでしょうか?

ソースとなるハイレゾ音源のダウンロードについては、こちらの”ハイレゾ音源がダウンロードできるおすすめ配信サイトと4つの注意点“の記事に整理しましたので、どのサイトからダウンロードすればよいか迷われている方などは、是非ご参考にどうぞ。

 

ハイレゾ対応でないスピーカーでもハイレゾ音源が楽しめるということは、実は既に今お使いのカーオーディオでもハイレゾ音源が楽しめてしまう可能性が高いです。

ハイレゾ音源を”簡単に”クルマで楽しむ様々な方法をこちらの”誰でも簡単にハイレゾを車(カーオーディオ)で楽しむ方法“の記事に整理してみました。 また、スピーカーの部品選定・種類について、こちらの”徹底分類!車のスピーカーの種類と選び方“の記事に整理してみました。 もしよければ、両記事とも合わせてご参考にどうぞ。

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